ソフトバンクは、飲料メーカーおよび自動販売機(自販機)オペレーター(※1)向けに、AI(人工知能)を活用した自販機オペレーション最適化サービス「Vendy(ベンディ)」を開発。2024年3月12日より提供を開始した。
※1 自販機の調達から設置先の開拓、設置後の商品補充・メンテナンスまで、自販機に関する一連の業務を行う専門事業者。
「Vendy」専用スマートフォンアプリの画面イメージ
「Vendy」開発の背景と経緯
「Vendy」は、自販機の最適な巡回ルート(巡回計画)や商品ラインアップ(棚割り)などを自動で生成する「AI分析機能」に加え、自販機向けの通信機や管理画面を含めたソリューションをワンストップで提供するサービスで、自販機オペレーションのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する。
この「Vendy」は、キリンビバレッジが採用を決定(※2)。2024年10月以降順次、同社のグループ会社が運営する自販機のオペレーションに導入され、2025年9月までに全国約8万台の自販機へ拡大していく予定だ。
※2 キリンビバレッジは「Vendy」の「アドバンスドプラン」(AI分析機能+管理画面)を導入。
「Vendy」の開発に当たっては、ソフトバンクの社員が自販機の巡回・補充などを行うトラックに同乗。実際の業務を体験して課題を把握するなど徹底した現場理解を基にサービスの開発を行なったという。
また、キリンビバレッジと共同で、キリンビバレッジのグループ会社が運営する自販機を対象に事前検証を実施したところ、実際の現場での有効性やあらゆるオペレーションに対応する汎用性を確認(※5)。
※5 事前検証は、2022年12月~2023年1月に約2000台の自販機を対象に実施。
キリンビバレッジは、この検証結果を踏まえて「Vendy」の採用を決定し、同社のグループ会社が運営する自販機のオペレーションに関わる業務時間の約1割削減と、約5%の売上増を見込んでいる。
ソフトバンクは今回の発表に際して、「Vendyの提供を通して自販機業界のDXを推進して、自販機業界における業務効率化や廃棄ロスの削減、売上向上などに貢献することを目指します」とコメントしている。
・「Vendy」のサービス概要・「Vendy」導入前後の業務フローのイメージ
「Vendy」の主な特徴
1. 自販機業界に特化した独自のAIアルゴリズムによる高精度な予測
飲料メーカーや自販機オペレーターなど複数社の協力を得て、現場のさまざまな潜在的・顕在的な業務課題を把握したソフトバンクのデータサイエンティストが、AIアルゴリズムを開発した。
これにより、自販機業界に特化した高精度な分析・予測が可能になった。
2. 自販機オペレーションの最適化を実現するソリューションをワンストップで提供
通信機(通信回線を含む)からAI分析機能、管理画面の各ソリューションを、運用・保守を含めてワンストップで提供。顧客のニーズや既存のシステム環境に合わせて、必要なソリューションのみを組み合わせての提供にも対応できる。
3. 導入しやすい価格体系
一般的に、AIを活用した自販機オペレーションの業務効率化を支援するサービスは、通信機の購入費用や顧客のAI開発費用などが重なり、導入コストが高くなる傾向がある。
これに対して「Vendy」は、クラウド型かつ汎用モデルとしてサービスを提供するため、顧客は初期費用無料で利用することが可能(※)。これにより、規模を問わず幅広い層の企業が導入しやすい価格体系となっているという。
※ 個別要件により追加でシステム開発が必要な場合や、自販機の年式により通信機へ追加の付属品が必要な場合などは、初期費用が発生。
「Vendy」の「AI分析機能」について
1. 巡回計画の高度化
自販機の在庫情報や巡回コストなどのデータを基に、各自販機の品切れによる機会損失を予防しながら巡回コストを最小化するための計画をAIで自動生成。生成された巡回計画は、オペレーション担当者が専用のスマートフォンアプリで確認できる。
2. アイテムの最適化
過去の売上データを用いた需要予測を基に、商品の入れ替えや巡回にかかる人件費および物流費などのコストを加味して、自販機の利益を最大化するための最適な棚割りをAIが自動生成。そのための作業指示を提示する。
関連情報
https://www.softbank.jp/biz/services/analytics/vendy/
構成/清水眞希