「自治体が支援する還元キャンペーン」というものがある。
これは文字通り、自治体が予算を組んで実施するキャッシュレス決済ポイント還元企画。「補助金の公平な分配」という角度から疑問視する声もあるが、それまで現金決済が主流だった地域にキャッシュレス決済サービスを急速普及させるという何ものにも代えがたい効果を含んでいる。
そして、この「自治体主導還元キャンペーン」は基本的に「早い者勝ち」。恩恵に授かろうか無視しようか悩んでいるうちに、キャンペーン自体が終わってしまう可能性があるのだ。
日本の金融インフラ
パンデミック前、日本は「キャッシュレス決済後進国」と呼ばれていた。
実のところ日本は、明治の元勲の賢明な判断のおかげで「誰しもが金融機関の口座を持っている」という環境が整っている。明治政府と各地域の豪商や旧士族の代表者が協力し合い、全国に153の国立銀行を設立させたのがその始まり。これらが合併や統廃合を繰り返しながらも全国各地に根を張っているのだ。
地方ではメガバンクよりも地方銀行や信用金庫のほうが存在感があり、そこで働く行員は非常にフットワークが軽い。就職直後の若い行員の仕事といえば、地元の町工場か商店街の御用聞きと相場が決まっているほどだ。
そんな地銀や信金の口座が大手キャッシュレス決済サービスと紐付けできるようになり、さらに自治体がキャッシュレス決済の普及に本腰を入れるようになると、地方の住人のライフスタイルは大きく変わった。
今やコンビニエンスストアやファミリーレストランのような大手チェーン店舗のみならず、個人経営の店舗においても当たり前のようにキャッシュレス決済が活用されている。
好評ゆえの早期終了
筆者の住まいは静岡県静岡市だが、2023年8月1日に「“最大10%戻ってくる” 静岡市 生活応援キャンペーン」というものが実施された。
これは当初の予定では同年10月31日までが期日だったが、蓋を開けてみればそれよりも2か月近く早い9月8日にキャンペーンが終了してしまった。それだけ利用者が多かった、ということだ。
こうした現象は全国で相次いでいて、佐賀県佐賀市で今年2月10日から実施されていた「佐賀市キャッシュレス決済ポイント還元キャンペーン」は、当初の期日3月20日から3月1日に変更された。これもまた、好評ゆえの早期終了である。
となると、「キャンペーンを利用するかせざるべきか」などと悩んでいる暇は全くない。
自治体主導の還元キャンペーンは、予算が尽きたからといってコップに水を継ぎ足すようにさらなる予算を計上するわけにはいかない。基本的に予算がなくなればそれっきりか、来年以降に同様の企画を行なうという流れである。
これはできるだけ早く、しかも期間上限額まで利用しなければこちらが損をしてしまう催事だ。
個人経営の店で買い物しよう!
ただし、ここで注意すべきは「キャンペーンの対象になっている店舗」である。
自治体主導還元キャンペーンは、地域振興の意味合いが多分にある。たとえば上記の佐賀市のキャンペーンも、対象店舗は「中小企業信用保険法第2条第1項各号に該当する『中小企業者』」だ。このあたりで自治体毎に多少の温度差はあるものの、キャンペーンの対象店舗とは即ち「商店街に軒を連ねる店」という認識で概ね間違いないだろう。
この記事を執筆している時点で還元キャンペーンを行なっている千葉県袖ケ浦市の場合も、対象店舗は「袖ケ浦市内の対象キャッシュレス決済を導入している中小店舗」とある。
これは袖ケ浦市を訪れた観光客にとっても朗報のはずだ。
「その土地でしか買えない・食べられないもの」を取り扱うショップは、大抵の場合個人経営の店舗。飲食店も同様に、個人経営の店は「オンリーワン」。ファミレスチェーンのように、全国どこでも食べられる味というわけではない。
そこにしかないものを買い、同時にいつもよりも遥かに高還元率のポイントを頂戴する。しかし再三書くようだが、そんな自治体主催の還元キャンペーンは早い者勝ち。チャンスが巡ってきたら、とりあえず飛びついておくのが最良である。
旅行先での買い物に最適
こう書くと読者に衝動買いを促しているように思われてしまうかもしれないが、今の還元キャンペーンは必ず上限額が設定されている。
PayPayが2018年に実施していたような高額ポイント還元企画は、転売や買い占め等の問題を呼びこんでしまったためにもはや実施されていない。自治体主催の企画も、期間内で数千円分相当のポイントに留まっている。
そうしたことを考慮すると、このキャンペーンが「旅行先での買い物」にピッタリの性質であると判断できるのだ。
【参考】
【千葉県袖ケ浦市】キャッシュレス決済で最大20%戻ってくる!「そでがうら春の買物大作戦!」を3月1日(金)から開始-PR TIMES
取材・文/澤田真一