ゾンビ習慣の快楽を助長させるドーパミン。つまり、このホルモンをコントロールすることが依存脱却の第一歩となる。それと併せ、効果的な方法をいくつか紹介する。
ドーパミンの調整とレジリエンス強化がカギ
これから良いことが起こるのを想像するとワクワクするが、その時分泌されるのが、ドーパミン。
ゾンビ習慣から抜け出せないのは、このワクワクする=テンションが上がる感情が、やめられない行動にくっついているからだ。さらにドーパミンは、脳の報酬回路と関係していて、過剰な分泌は依存の引き金にもなりうる。
「快楽物質や快楽行動は、依存性の高いものほど多くドーパミンを分泌させ、行動を促進します。ゾンビ習慣から抜け出すには、このドーパミンが出るワクワクポイントを自覚して、快楽スイッチに〝待った〟をかけることが大切。ゾンビ習慣に手を出したくなるタイミングでドーパミンの働きを抑えて、テンションが下がるよう工夫するのです。逆に身につけたい習慣があるのにできないのは、それをやろうとしてもテンションが上がらないから。それであれば、良い習慣を起こす時にテンションが上がることをすればいいのです」
そして、このドーパミンの分泌を調整してくれるホルモンが、興奮と鎮静のバランスを取るセロトニン。ドーパミンの分泌自体を減らすのは難しいが、セロトニンを増やすことで過剰な分泌を抑えることができる。そのために有効なのが、(1)日光、(2)リズム運動、(3)食事の3つ。
加えて、普段から幸福貯金を増やし、ストレスから回復する力を身につけておくことも重要だ。
「ストレスによるダメージから回復する力は『レジリエンス』と呼ばれますが、この力を左右するのは、何も心の持ちようだけではありません。こちらも食事、運動、睡眠リズム、人や自然とのつながりなど、多数の要素が関係しています」
セロトニンの増やし方と、レジリエンスの強化法の一例は下に示したので参考にしてほしい。
ドーパミンは人が元気で快適な日々を送るために欠かせないホルモン。少ないと気力がなくなり、過剰分泌は依存の原因となる。適度に保たれることが重要。
『「やめられない」を「やめる」本 -脱・依存脳-』
著/山下あきこ(脳神経内科専門医)
取材・文/山下あきこ、編集部 イラスト/西谷 久 図版/後藤裕二(ティオ)