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顕在化する「教育の地域格差」を解消するために必要なのものは何か

2024.03.13

生まれ育った地域や環境によって生じる教育格差。人口減少・高齢化により地域の過疎化とともに、地域間の格差はますます加速している。なぜ地域によって教育の格差は生じるのか。そこにはどのような支援が必要とされ、この先どのような未来が待ち受けているのか。「世界を拡げる一歩目を、どこからでも」をビジョンに掲げ、国内で最も過疎化が深刻と言われる北海道で教育関連事業を行う、株式会社あしたの寺子屋の代表取締役社長・嶋本勇介さんにお話を聞いた。

「自分には関係ない」と、自ら選択肢を狭める「可能性の認識差」

そもそも、教育の地域格差が生まれる理由とは何か。一つ目に考えられるのは、「地域の大人の多様性の低さ」だ。都市部と地方では大学進学率に大きな開きがあり、地域内に大学等の進学先がないことも少なくない。周りにいる大人の就職先は一次産業が中心なことが多く、多様な職業や生き方をする大人との接点は非常に限られる。

二つ目は「情報格差」。人口の少ない地域では、塾のような教育施設や、美術館・映画館などの文化・娯楽施設など、新しい情報や刺激に触れられる場が都市部に比べて圧倒的に少ない。

しかしそれ以上に大きな要因として嶋本さんが指摘するのが、「可能性の認識差」だ。可能性の認識差とは、挑戦できる機会があったとしても「まだ早い」「自分には関係ない」と思い、自ら諦めてしまうこと。例えば文部科学省が展開する留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」は日本全国の高校にポスター掲示を行なっており、その可能性は誰にでも開かれている。ところが実際にこの制度を活用し、留学する生徒は都心部に比べて地方部ではずっと少ない。背景にあるのは地方の「関係の硬直性」だと嶋本さんは言う。

「僕らは人口3万人未満の地方都市を中心に事業を行なっているのですが、そういった地方では、幼稚園から中学校、場合によっては高校や大学まで、10年以上にわたり顔ぶれの変わらないメンバーで関係性を築いていきます。そこに加えて周りの大人の多様性の低さ、情報格差もあり、地域における『当たり前』が硬直化します。地方から『外』に出ていく物理的・金銭的なハードルの高さも相まって、ますます地方の子どもにとって新しい挑戦への道が阻まれてしまうのです。」

明確な夢や目標がない子どもにこそ「きっかけ」が必要

あしたの寺子屋は、これまでに学童や塾の代替となる居場所の運営サポートや、大学生と社会人による中高生向けのスクール事業、全国の高校生を対象にした企画コンテストの開催などを行なってきた。2023年9月、地域の子どもたちの夢やチャレンジの一歩目を応援する「きっかけプロジェクト」をスタート。クラウドファンディングを通して支援者を募り、地方の子どもの越境・挑戦を応援する返済不要の「きっかけ奨学金」制度を設けている。

「これまでの事業を通して出会った子どもたちの中には、『自分も大学に通いたい』といって大学進学を目指すようになった子や、留学など新たな挑戦を始めた子もいます。一方で、そこまで明確な夢や計画がない子も数多くいます。僕たちはむしろそういう子にこそ、まずはいつもと違う環境に越境し、挑戦してみる経験が必要なのではと考えています。」

ちょっとした夢や好奇心に対して「まずはやってみよう」と後押しする支援が、多様な刺激を受けにくく、移動のハードルが高い地域には必要だ。そこで地域の子どもたちが越境・挑戦することに踏み出す「きっかけ」を応援するのがきっかけプロジェクトだ。

きっかけプロジェクトでは、奨学金の対象となるプロジェクトが毎月2件ずつ採択される。特徴的なのは、そのプロジェクト採択が「選考」ではなく「プロデュース」の場となっていること。応募したプロジェクトに対して動機や細部を深掘りされることで、応募した子どもたちにとっては、たとえ採択されなくとも学びと挑戦の経験となる。応募は何度でも可能なため、一度は選ばれなかったプロジェクトをブラッシュアップさせ、再挑戦することもできる。

もう一つの特徴は、支援者が金銭面だけでなく、「経験」でのきっかけ支援を行う仕組みになっていること。プロジェクトが終わったタイミングで開催されるプロジェクト報告会では、支援者やプロジェクトに関わる大人も参加する交流会がある。そこで大人たちが自らの経験を子どもたちに話すことで、子どもたちは地元では出会う機会の少ないロールモデルと出会うことができる。

大人たちが自らの人生に影響を与えたと感じた本が集められた「きっかけ書店」からは、自分の気になる仕事や夢への手がかりが得られる。今後は本だけでなく、映画や音楽など、多岐にわたるジャンルでコンテンツを拡大予定。

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