私たちは1日に平均10回前後のおならをしているという。生理現象とはいえ、気軽にどこでもできるものではない。自宅や一人だけの空間ならまだしも、大事な会議中だったり楽しいデート中に、ヤツは突然襲ってくる。
新生活が始まるこれからの時期は生活習慣も変わることから、体の不調を感じる人も多いことだろう。中には、おならやガス溜まりに悩む人が出てくるかもしれない。
そんな方に朗報。
おならのニオイはもちろん、さらには音も気にならないほど軽減してくれるパンツが発売された。その名も「Toride Pants(トリデパンツ)」だ。
その機能が凄い。活性炭入り専用パットがおならの原因となる肛門周辺の皮膚の振動を抑えてガスのニオイを吸収し、同時に音も抑えてくれるという。
開発したのは岡山の医療用品メーカー・ダイヤ工業株式会社と、PRのチカラで地方の魅力を全国に届ける課題解決カンパニー・株式会社Toride。
今回、開発を手掛けたTorideの代表取締役・柳井孝文氏にトリデパンツ誕生の経緯を聞いた。そこにあった切なる願いとは?
下着開発の素人が挑んだニッポンの悩み
正直、おならのニオイを外に漏らさず消臭してくれる下着や衣類はこれまでも数多く販売されてきた。ただ、ニオイだけでなく、音も軽減してくれるパンツは筆者自身初耳だった。
なぜそこまでこだわり抜いたパンツを作ろうと思ったのか?開発のきっかけにはこんな想いがあった。
「全てのきっかけは、おならが原因で困っている人が「外出するのが怖い」という一言でした。最初は『たかがおならくらい』と思っていましたが、過敏性腸症候群という病気があることを知り色々と調べたんです」
「この病気は通称IBSと呼ばれ、ストレスなどの心因性が原因で下痢や便秘、おなら症状などが日常的に頻発することがわかりました。しかも、日本人の約10人に1人が苦しんでいて社会問題であることも。当事者にとっては大病と同じでとても深く大きな悩みだと感じました」
「私は医療従事者ではないので病気を治すことも改善することもできませんが、症状が周囲にバレない環境を作ることで不安が少しでも和らぎ、生活しやすくなるのではないかと考え、それをパンツで実現しようと思ったんです」
知人から「おならをした小学生がいじめに遭った」との話も聞いた柳井社長は動かずにはいられなかった。
だが、開発には大きな壁と苦労が待ち構えていた。
「私はこれまでPR事業をメインにやってきたため、商品の開発自体初めての超ど素人でした。そのため開発中は苦労の連続でしたね」
「既に消臭パンツは多数ありましたが、音問題もパンツで解決できたら手軽でいいなと思い、最初は全ての場面で音もニオイもバレない商品を目指したんですが、それは物理的に不可能なことがわかり、着座時に特化して周囲に音もニオイもバレないパンツへシフトして開発を進めていきました」
――開発で特に苦労した点は?
「それは、消臭パッドをフィットさせるための配置や大きさ、活性炭の粒の大きさです。本製品は消臭防音パッドをおしりの割れ目にフィットさせることでおならの音の原因である肛門周辺の皮膚の振動とガスのニオイを軽減します。これを医療用品メーカーのダイヤ工業に依頼し共同開発することができました」
改良に改良を重ね、時には家族にも協力してもらいながら実験を繰り返したことも。その結果、専門的な機関で試験を行った時には…
「ニオイの原因であるガスについては一般財団法人カケンテストセンターで消臭試験を行ったところ、アンモニアガス減少率91%、硫化水素ガス減少率99%、メチルメルカプタンガス 減少率99%という結果でした」
「音については活性炭パッドがある場合と、ない場合の騒音試験を岡山県工業技術センターで実施しました。パッドなしでは45デシベル、パッドありでは25デシベル。ちなみに25デシベルはエアコンの音より小さいレベルです」
また、18名のモニターに実際に着用してもらい、1m以内にいる人にバレるか?の調査をしたところ88%で効果があることがわかったという。さらにこんな声も、
「神奈川県の高校3年生のモニターさんから『ニオイや音がバレないことはもちろん、一番よかったのは着用することでメンタルケアができたことです!』という嬉しい声をいただきました。3年生で共通テストもあったのですが、いつも常用している薬を飲まずトリデパンツを履いて無事テストを終えられたそうです」