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管理栄養士が解説!食品選びの新基準〝健康コスパ〟で食材を選ぶメリット

2024.03.13

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

健康を軸にしてコストパフォーマンス「健康コスパ」

健康コスパとは「健康を軸にしてコストパフォーマンスを見る」という健康に特化した指標。どのような栄養素がどのくらい含まれているか、得られる価値やメリットがどのくらいあるのかを表して、食品を購入するときに、より健康貢献度が高いものを選べるというもの。

健康コスパを提唱している管理栄養士の浅野まみこ氏に、毎日の食卓によく上がるおなじみの食材を健康コスパで分析していただいた。

【浅野まみこ氏 プロフィール】
管理栄養士・健康戦略コンサルタント。総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて糖尿病の行動変容理論をベースに1万8千人以上の栄養相談を実施。その経験を生かし、健康経営サポート、レシピ開発、食のコンサルティング、講演、イベント等で活動。具体的な食品を使った実践型栄養アドバイスをモットーとしている。

「経済的な“コスパ”、時短につながる“タイパ”も重要ですが、それだけで判断してしまうと、栄養の観点が抜けてしまいます。安いという基準だけで選ぶと栄養素的には足りないものが出てきますし、食卓が単調になってしまいます。

健康コスパという視点を加えることで、自身や家族の体にとってより良いものが選べて、食卓が豊かになりますし、なにより日々の食品を選ぶ視点が変えられるというところが最大のメリットだと思います。

健康コスパの例として一番わかりやすいのはヨーグルト。ヨーグルトは健康を意識して購入する食品でありながら、多くの種類が出回っているため、好みの味やいつも買っているものという基準で選ぶことが多いと思います。

ヨーグルトは乳酸菌発酵で作ることが主で、商品によって乳酸菌の種類が異なります。ヒト由来の乳酸菌、動物由来の乳酸菌、植物由来の乳酸菌と菌の種類でも違いがありますが、一番大きな比較ポイントとしては、乳酸菌だけのものか、乳酸菌にビフィズス菌を加えているかということです。ビフィズス菌のあり・なしはヨーグルトにおいては大きな差になり、味にも影響しています」(以下「」内、浅野氏)

乳酸菌は酸に強いが、ビフィズス菌は乳酸菌より酸に弱いため、ビフィズス菌入りのヨーグルトは、酸味をマイルドにさせているものが多い。

そのため、酸味が強いヨーグルトは乳酸菌発酵だけのものが多く、ビフィズス菌入りのヨーグルトはまったりとした味わいのものが多い。(※下記画像左がビフィズス菌入り、右が乳酸菌のヨーグルト)

「また、乳酸菌は主に小腸で働きますが、昨今、注目されている『腸活』のメインは大腸を指します。ビフィズス菌は主に大腸で働き、乳酸のほか、『短鎖脂肪酸』のひとつである「酢酸」を生み出すことが大きな特徴です。短鎖脂肪酸には3種類(酢酸、酪酸、プロビオン酸)あります。短鎖脂肪酸は、粘膜をより保護する働きがあり、免疫機能調整や強い殺菌力、血糖値上昇抑制、肥満予防などさまざまな働きがあり、腸活で今、注目されています。乳酸菌のみのヨーグルトよりビフィズス菌が入っている方が、健康コスパが高いと言えるでしょう」

〇豚肉・鶏肉・牛肉

「豚肉、鶏肉、牛肉はいずれもたんぱく質摂取として優秀な食べ物です。ビタミンB1、鉄分、高たんぱく等、肉に関してはそれぞれ特性や食べる部位によっても異なるため、目的によって健康コスパも異なります」

<豚肉は糖質代謝に働きかけるビタミンB1が豊富>

肉類の中では比較的安価なため、食卓によく上がるのが豚肉。豚肉は糖質代謝に働きかけるビタミンのB1が肉類の中で最も多く含まれている。豚(もも肉/脂身付)100gあたりビタミンB1が0.9mgに対し、牛(もも/脂身付)は0.08mg、鶏(もも/皮付き)は0.10mgと、豚肉はビタミンB1が豊富。

ビタミンB1は糖質を体内で燃やしエネルギーへ変えるために必要な栄養素であるため、ごはんやパンといった主食をよく食べる人、甘いもの好きの人には、豚肉は健康コスパが一番高いといえる。

<高タンパク目的なら鶏肉はささみとむね肉を>

鶏肉は低脂肪、高タンパクというイメージで知られており、筋肉作りやダイエットを目的にしている、脂質を摂りたくない人向けには健康コスパが高い。

「鶏肉はタンパク質が高いと思われていますが、実はタンパク質はどの肉もそんなに大差がありません。鶏肉ではささみ、むね肉でしたら100gあたりのタンパク質量は10gほど他の肉類より上がりますが、もも肉に関しては他の肉類とあまり変わらないため、高タンパクを目的とするなら、ささみとむね肉を選ぶようにしましょう」

<鉄分豊富な牛肉は貧血防止にも>

牛肉は鉄分の含有量が肉類の中で飛び抜けて多く、鉄分の不足がちな女性にとっては健康コスパが高い。輸入牛肉の肩ロースと豚肉の中型ロースの鉄分を比較すると、牛は1.2mg、豚肉0.3mgと、同じロース部位でも4倍ほどの差がある。鶏もも肉は0.6mgで、鉄分に関しては牛の半分程度。

「20代~30代の日本人女性の半分以上が隠れ貧血と言われているほど、女性にとって鉄分は不足しがちな栄養素ですので、意識的に牛肉を食生活に取り入れることもおすすめです」

〇サラダ用葉物野菜

レタス類の中で、レタスは淡色野菜だが、サニーレタス、リーフレタス、サラダ菜は緑黄色野菜に分かれる。淡色野菜、緑黄色野菜はベータカロテンの含有量で分類され、100gあたりのレタスのベータカロテンの含有量は240㎍、サラダ菜は2200㎍、リーフレタスは2300㎍、サニーレタスは2000㎍と大きな差がある。

「ベータカロテンの含有量はおおよそ10倍ほど違いますが、レタス類はさほど値段に差がありませんので、サラダに入れるとしたらリーフレタス、サラダ菜、サニーレタスを選んだ方が、健康コスパが上がります。

むくみ改善に働きかけるカリウムに関しても、レタスは200mgに対し、サラダ菜410mg、リーフレタス490mg、サニーレタス410mgと2倍ほど違ってきます。カルシウムの含有量もレタスと比べると大体4倍近く(レタス19mg サニーレタス66mg)多くなっています。鉄分もレタスが0.3mgですが、サラダ菜は2.4mgと、ここでも8倍違ってきます。

レタスはビタミンCの比較対象として取り上げられることが多いですが、レタス100gに対し、ビタミンCは実は5mgしか入っていないんです。サラダ菜は14mg、リーフレタス21mg、サニーレタス17mgなのでビタミンC含有量も3倍から4倍高いです。えぐみや苦みが感じにくいレタスを好む方も多いですが、サラダ用の葉物野菜の健康コスパに関して、ほぼレタスは弱い結果です」

〇豆腐

絹ごし豆腐と木綿豆腐は食感の違いもあり、それぞれ好みや使う料理によって選ぶという場合も多いが、豆腐については製造工程の違いが健康コスパの差になる。

木綿豆腐は豆乳をにがり(凝固剤)で固めたものを一度崩し、型に入れて圧力をかけて押し固めて作るが、絹ごし豆腐は豆乳ににがりを加えてそのまま固めるだけ。

水分を抜いて凝縮して作る木綿豆腐は、たんぱく質やカルシウムなど大豆本来の栄養素が多く含まれており、絹ごし豆腐に比べて、全体的に少しずつ栄養価が高くなっている。

反対に水分量が多い絹ごし豆腐は、栄養価はやや下がるが、カロリーが低く、カリウムが多いのが特徴だ。

〇魚の缶詰

そのままでも、調理に使ってもおいしいツナ缶と、ダイエットに良いとテレビ番組で紹介されブームが巻き起こったサバ缶。使い勝手がよくて常備品としても重宝する缶詰だが、栄養価が高い健康コスパの視点で見るとサバ缶が「圧勝」という結果に。

「比較ポイントは『オメガ3脂肪酸』の含有量です。サバ缶はツナ缶に比べ、血液凝固低下作用や認知症の予防効果が期待されるオメガ3脂肪酸を多く含んでいます。その他、カルシウムやビタミンD、鉄、亜鉛ビタミンEなどもサバ缶の方が豊富に含まれているため、あっさりして脂質が少ないツナ缶に比べて、サバ缶の方が全体的に栄養価は高くなっています」

〇海藻

食物繊維やミネラルが手軽に摂れて低カロリーの「もずく」と「めかぶ」。食物繊維の含有量を比較すると、めかぶはわかめの根元部分を使っていることもあり、もずくに比べて食物繊維が100gあたり3.4g、もずくは1.4gとなっており、2倍以上という大きな差がある。

造血ビタミンと呼ばれる「葉酸」「カリウム」など多くの栄養素でめかぶが上回るため、健康コスパはめかぶが高い。

〇お酒

「嗜好品で好みに大きく左右されますし、飲酒量によってはいずれも健康を害する恐れもあるので、アルコール類は健康コスパの基準では当てはまりませんが、あえてお酒の中で健康コスパを考えると、一番高いのは赤ワインです。

抗酸化作用を持つポリフェノールの一種『レスベラトロール』が赤ワインには多く含まれます。レスベラトールには抗がん、抗肥満、抗糖尿病、アンチエイジング等に作用するのではと言われており、現在も多くの研究が進められています」

【AJの読み】食材選びの指標のひとつとして意識した「健康コスパ」

コロナ禍による生活様式の変化もあり、健康に気遣う人が増えている一方、昨今の物価高騰による家計や企業への影響は深刻化しており、節約の意識も高まっている。

食品メーカーが2022年11月に実施したアンケート調査では、7割近くが「節約をしながら健康にも気遣うことに苦労を感じる」と答えている。

節約志向が高まる中で価格の安いものを選びがちだが、同じ価格帯の食材なら、「健康コスパ」を判断の基準に入れると、より健康を意識した選択ができる。日々の食材選びの指標のひとつとして参考にしてみてはいかがだろうか。

文/阿部純子

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