女性の健康課題をテクノロジーで解決する商品やサービスが「フェムテック」である。FemaleとTechnologyを合わせた造語だ。テクノロジーで生理や妊娠、出産や更年期障害など、女性に関わる身体の苦痛を減らし、快適に過ごすための商品やサービスを指す。
フェムテックの男性版が「メンテック」あるいは「メイルテック」である。MaleとTechnologyを合わせた造語で、男性妊活や薄毛といった男性特有の健康課題に特化した商品やサービスを指す。ロート製薬が男性向けの運動精子検査キットを発売したり、順天堂大学医学部付属順天堂病院で男性妊活外来が設置されるなど、メンテック市場も盛り上がっている。
その中でも注目なのが、35~64歳の男性中年層をターゲットにした「おじテック(※)」だ。
※「おじテック」はクロスプラス株式会社の登録商標です。
累計販売出荷枚数が5万5千枚突破!クロスプラスの尿漏れ対策パンツ「KEEP GUARD」
創業70年の老舗アパレルメーカー・クロスプラス株式会社は、おじテックの先駆けとして尿漏れ対策パンツ「KEEP GUARD(キープガード)」を展開。約1年半で5万5千枚の累計販売出荷枚数を記録するなど人気商品となっている。吸水生地と防水布を掛け合わせた安心構造でモレをしっかりガード、バレずに尿漏れケアができるアイテムだ。
昨年7月にはBEAMS JAPANが監修した新たな下着、「KEEP GUARD premium line」も展開。ファッショナブルで、色やテキスタイルもおしゃれな印象を打ち出しているのが、ポイントとなっている。
尿漏れの不快感を無くす専用パンツが次々登場
中高年男性の市場の盛り上がりを示すように関連商品も続々登場している。
グンゼの尿漏れ対策パンツはその名もズバリ「イケオジパンツ」だ。見た目はボクサーパンツなのに尿漏れと脱臭にも配慮している。肌側のメッシ生地とシミ対応布、ボクサーパンツ生地の3層構造で乾きも早く、快適な履き心地を実現させている。イケオジパンツでは特に「3Dホールド感」を実現させているのが特徴で、はいていない感、ホールド感、スタイリッシュ感の3つを実現させた。
さらに尿失禁解消のための下着ではドンキ・テクノロジーパンツの「もれナック」も好評で、4層構造でしっかり吸水する上、肌に触れる内側は速乾でベタつきにくい素材で、ストレスが無い。また、吸い上げた水分が、表面の生地に漏れにくく、ちょい漏れにも対応している。
尿漏れ対策商品のサブスクも大人気
尿失禁に対応した下着だけでなく、尿漏れパッドのサブスクリプションサービスも注目を集めている。TOKIMEKU JAPANは新ブランド「MELLOW STYLE」を立ち上げ、軽失禁に対応したパッドとパンツのサブスクリプションサービスを実施している。スマホで好きなタイミングで定期的に届く設定にしておけば、必要な分だけ届くシステムで、ドラッグストアなど店舗で買うのに抵抗がある人にも好評だ。
なぜ「メンテック」や「おじテック」は泌尿器系のアイテムに着目するのか
メンテック市場は年齢に関係なく、男性全体をターゲットにしているが、最近は35~64歳の男性中年層をターゲットにした「おじテック」商品が注目されるようになっている。日本のおじさん世代が日々健康で前向きに過ごすための商品だが、特に中年層に多い尿漏れなど、泌尿器系の健康課題に特化した新商品が目立っている。
排尿機能に関するトラブルは中年女性にも多いが、同じ失禁でも、女性は腹圧性尿失禁で、男性は排尿後尿滴下と、それぞれ症状が異なる。これは男女の身体の構造の違いによるもので、男性は膀胱の下に前立腺があり、その中に尿道が通っていること、また、尿道が女性より長いため、排尿時間が長い点が、尿トラブルを引き起こす原因となっている。
中年男性は、排尿後尿滴下や追っかけ漏れと呼ぶ症状が特に多く、排尿したと感じた後でも、無意識に尿が漏れてしまう。さらに加齢により前立腺が肥大してしまい、尿道が圧迫されてうまく排尿できなくなる。その上、中高年になると内臓脂肪型肥満も増えてくる。内臓に着いた脂肪が膀胱を圧迫して、尿漏れを引き起こす。特に加齢により尿道をコントロールする尿道括約筋などが衰えてくることで、尿漏れの症状が出やすくなるのだ。
尿漏れパンツの売れ筋を見てもわかる通り、これからのメンテック、おじテック商品のポイントは単に機能性が高いだけでなく、おしゃれで自己肯定感を高める高い品質の商品とサービスであることが重要である。単なる「中年お悩み解消商品」でないものこそが、今、求められている。
文/柿川鮎子