日本型ライドシェアの話題。これはまるで掘りたての温泉のように、新しい発表が毎日毎週湧いてくる状態だ。
去年まで、ライドシェアなる新交通システムに興味を持っていた自治体はどれだけあっただろうか。去年10月の臨時国会開会における岸田文雄首相の所信表明演説が、今の盛り上がりを生み出したと言っても過言ではない。
2月22日、「活力ある地方を創る首長の会」が都内で記者会見を実施し、5つの市及び町が独自のライドシェアを始めると明かした。これらの自治体が実施するライドシェアがどのような形になるのかを、この記事で考察していきたいと思う。
全国5自治体が一斉挙手
まずは2月22日に配信のNHK NEWS WEBの記事を一部引用させていただこう。
一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を送迎するライドシェアについて全国の市町村長の有志で作る団体は、政府が拡充した制度を活用して、新たに5つの市と町がライドシェアの事業を始めることを明らかにしました。
ライドシェアをめぐっては、これまでも移動手段の確保が難しい過疎地などでは、自治体などの管理のもと、認められていましたが、政府は、去年12月、夜間など時間帯によっては移動手段が確保できない地域も認めるなど、制度を拡充することを決めました。
これを受けて、市町村長の有志の団体「活力ある地方を創る首長の会」は22日、都内で会見を開き、合わせて5つの市と町が新たにライドシェアの事業を始めることを明らかにしました。
(ライドシェア 新たに5市町で事業開始へ 政府の制度拡充を活用-NHK NEWS WEB)
下線は筆者が引いたものだ。「政府は、去年12月、夜間など時間帯によっては移動手段が確保できない地域も認めるなど」の一文は、「活力ある地方を創る首長の会」が想定する自治体ライドシェアのコンセプトを意味しているため、ひとまずここで強調させていただきたい。
上の会見で手を挙げた5自治体とは、
石川県小松市
富山県南砺市
京都府舞鶴市
大分県別府市
熊本県高森町
である。そしてこれらの自治体が掲げるライドシェアとは、つまるところ日本型ライドシェアだ。
「日本でのライドシェアなのだから日本型ライドシェアになるのは当然」と考えてはいけない。たとえば大阪府と大阪市は万博開催に合わせたライドシェア導入を目指しているが、その制度案は国の提示した日本型ライドシェアとは大きな温度差がある。具体的には大阪府・市の目指すライドシェアは24時間運行で、さらにタクシー会社以外の業者が運行管理主体として参入することを認めるというもの。これは暫定的に「海外型ライドシェア」と呼ぶべきか。アメリカ都市部で既に運行されているような形態が、大阪府・市の理想である。
一方、上記の5自治体は大阪府・市のような海外型ライドシェアを目指すつもりはないようだ。