卓越した英語力を生かして、主張すべきことは主張を!
本当に難しい時代にJFAのトップの座に就く宮本氏は大変だが、難局だからこそ、できることは少なくない。代表キャプテン時代は中田英寿を筆頭に強烈な個性の揃った集団をまとめるのに苦労していたが、今はむしろそういう人材の能力を発揮してもらうように促していくべき。彼は仲間の背中を押すことには長けているタイプ。そのストロングポイントを生かしてほしい。
一方で、言うべきことは強力に主張すべきだ。その一例が、なでしこジャパンのパリ五輪アジア最終予選を巡るゴタゴタだ。2月24日のアウェー・北朝鮮戦の開催地が決まらず、試合5日前にサウジアラビアのジェッダに決定するという異例の事態が起きたのだ。キャプテン・熊谷紗希(ローマ)ら欧州組の面々は特にハードな移動を強いられ、案の定、そのゲームは0-0で引き分けるのが精一杯。池田太監督と選手たちの奮闘によって、28日の東京・国立競技場での第2戦を2-1で勝利。何とか五輪切符を手にしたが、アジアサッカー連盟(AFC)に対する発言力をもっと高めないと、同じような出来事が起きないとも限らない。
英語力のある宮本新会長だからこそ、タフなネゴシエーションもできるはず。そうやって自分にできることを1つ1つ増やし、“泥臭い会長”へと飛躍を遂げてほしいものである。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。