アジアカップ8強敗退の衝撃。日本代表再建機運をどう高めるのか?
記者の質問に答える宮本恒靖氏。今月からJFAの新たな会長に就任する(筆者撮影)
1~2月にカタールで開催された今回のアジアカップ。ご存じの通り、ホスト国・カタールが連覇を達成し、前評判が非常に高かった日本代表はまさかの8強止まりに終わった。その衝撃は決勝から半月あまりが経過した今も大きなダメージとして残っている。
初戦・ベトナム戦から2失点し、続くイランに1-2の敗戦。3戦目のインドネシア戦とラウンド16・バーレーン戦は3-1で勝利したものの、そのタイミングでエース級の伊東純也(スタッド・ランス)を巡る週刊誌報道が出て、チームに不穏な空気が流れ、最終的には宿敵・イランに準々決勝で1-2の衝撃的逆転負けを喫してしまったのだ。
「『アジア最強』とか『調子いい』とかいろいろ言われていたが、もう一回、1からやり直すちょうどいい機会にしたい」と日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は苦々しい表情で語っていたが、確かに大会序盤はそういった浮ついた空気が漂っていたのも確か。そこに世間を揺るがすような一大事がのしかかれば、森保一監督としてもマネージメントに苦慮するのも当然だろう。
ただ、そういったピッチ外の部分のみならず、空中戦に競り負ける、簡単にボールを失うといったバトルの部分を今一度、見直さないといけないのも事実と言える。
日本代表キャプテンとして2006年ドイツW杯予選を戦っていた頃の宮本氏(筆者撮影)
47歳の元日本代表キャプテンがマネージメントのトップに
日本代表再建の機運を高めるべき立場にいるのが、今月下旬に新会長就任が決まっている宮本恒靖氏だろう。多くのサッカーファンにとっては周知の事実だが、彼は2002年日韓・2006年ドイツの両ワールドカップ(W杯)に出場し、キャプテンマークを巻いた名DF。ガンバ大阪でプロ入りした頃から同志社大学に通って大学を卒業。頭脳明晰、英語も堪能で、2004年アジアカップの準々決勝・ヨルダン戦では主審に英語で交渉し、PK戦の使用ゴールを変えさせたこともあったほどだ。
現役時代はガンバ、オーストリアのレッドブル・ザルツブルク、ヴィッセル神戸の3クラブでプレー。2011年末に引退した後は、国際サッカー連盟(FIFA)主宰の大学院・FIFAマスターを受講し、「ボスニア・ヘルツェゴビナの町・モルタルで民族融和に寄与する子供向けのスポーツアカデミーを設立することは可能か」をテーマに修士論文を発表。卒業している。
この時点ではマネージメント方面での活躍が期待されたが、本人は現場への思い入れが強かったのだろう。2015年に古巣・ガンバに戻ってアカデミーの指導者に。2016年にJFA公認S級指導者ライセンスを取得すると、2018年途中からトップチームの指揮を執り始める。2020年にはJ1・2位、天皇杯準優勝という成果を挙げたが、2021年にはまさかの途中解任に追い込まれた。
これを機に現場指導から離れる形になった宮本氏は空白期間を経て、JFA入りを決断。2022年から会長補佐として田嶋会長の下で実務を学び始める。この時点から「会長就任ルート」が敷かれていたと見ていい。
実務経験2年の新会長となるだけに、彼自身も手探りで進めなければいけない部分もあるだろう。目下、日本サッカー界はさまざまな課題に直面しており、彼が手掛けるべき事案は少なくない。
神戸に移籍した際の入団会見。楽天・三木谷浩史会長(右)との出会いもマネージメントを学ぶ好機になったはずだ(筆者撮影)