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「クライミングは自分と向き合えるスポーツです」パリ五輪スポーツクライミング代表・森秋彩ロングインタビュー

2024.03.10

「代表内定」よりも「完登」が気になった世界選手権

LJCでは7度の優勝経験のある森秋彩さん

――昨年8月、クライミングの世界選手権でパリ五輪の代表権を獲得した時の気持ちを教えて下さい

森:「まさか自分が」と驚きました。

世界選手権は約2週間にもわたる長い戦いで精神的にも体調的にも不安定な中、最後の得意なリードで挽回でき、パリ五輪の内定を決めることができました。

――世界選手権で最後のリードを登っている最中には、どこまで高度を上げれば表彰台が確定するかわかっていなかったのでしょうか

森:はい。順位のことを考えると成績にとらわれてしまうこともあるので、考えないようにしています。

競技を終えて下に降りながら、コーチがガッツポーズをしているのが見えて表彰台が決まったことを把握しました。

――その後もあまり嬉しさを爆発しているように見えませんでしたが……

森:競技後は、順位が決まった後も登れなかった(※)悔しさの方が勝っていました。

帰国してからたくさんの方々からお祝いの言葉をいただいて、段々と嬉しさが込み上げてきました。

(※)完登(最後まで登りきること)すれば100ptのリード課題で、森は96.1pt。あと一手、惜しくも完登することはできなかった。

クライミングの魅力は「自分と向き合えるスポーツ」

――現在は五輪に向けて、どのようなトレーニングをしているのでしょう

森:週3~4回、1日おきにクライミングジムで登っています。基本的には登って鍛えるスタイルなんですが、最近は苦手なムーブ系課題のために、スクワットとかジャンプとかトレーニングも導入しています。足の力をうまく推進力として使えるようになって跳ぶ動きを少しでも改善できたらいいなと思っています。

ホームジムは特に定めていないと語る

――メンタルトレーニングはどうですか

森:メンタル面は特にケアをしていませんが、レストの日(トレーニングの休息日)はあまりクライミングのことは考えずに音楽を聴いたり料理をしたりオン/オフのメリハリをつけています。

他の点で言うと、最近、パン屋さんでアルバイトをはじめました。クライミングはまだまだマイナー競技なので、クライマー同士の上下関係があまりありません。でも将来、クライミングの指導者とか普及活動に携わることになったら、基本的なあいさつやマナー、人とのコミュニケーション能力って絶対に必要になってきます。

だからバイト先では店長さん以外にはクライマーということは明かさず、時には怒られながら勉強させてもらっています。

――では森さんの強みや長所を教えてください

森:クライミングが大好きなことです。どんなことも楽しむことが強くなる一番の近道だと思っています。能力的な面だと、持久力、保持力、足への信頼感です。

足への信頼感を支えるBJC2024でも着用されたLA SPORTIVAの『FUTURA(フューチュラ)』のニューモデル(2024年2月現在未発売)

――パリ五輪に向けての抱負を教えてください

森:これまで同様に、まずは成績にとらわれず楽しむことができればと思います。また五輪は本当に限られた人にしか経験できない貴重な機会ですので、いろいろと吸収したいです。

私が楽しそうに登っている姿を見て、「楽しそうだな」とか「やってみたいな」とか思ってくれる人が増えてもらえたら嬉しいです。私はクライミングのおかげで人生が楽しくなりましたので、クライミングの魅力をもっと知ってもらいたいです。

――では最後にクライミングの魅力を一言でお願いします

森:自分と向き合えるスポーツです。

壁ではなく自分とも向き合う森秋彩さん

取材・文/峯亮佑 撮影/洞澤佐智子

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