4月から新生「Vポイント」が始まる。
これは日本のポイント業界を長年牽引してきたTポイントが三井住友カードのVポイントと統合する形で開始されるものだが、新生Vポイントの登場により日本のポイント市場はVポイントの天下統一……というわけにはいかないだろう。
Vポイントを酷評するわけではまったくないが、この市場には既に強力な対抗馬がいる。
dポイント、Ponta、楽天ポイント。その様子は、まるで北条、今川、長尾上杉、武田が鎬を削った戦国時代の関東甲信越のようだ。
そしてVポイント以外の有力ポイントサービスは、モバイルSuicaという盛大な力を誇る味方を既に確保している。
【2024年春START】青と黄色のVポイント コンセプトムービー
https://www.youtube.com/watch?v=uDNzLEfPdPg
d払いとモバイルSuicaが連携
2月13日、東日本旅客鉄道株式会社がこのようなプレスリリースを配信した。
Android版d払いとモバイルSuicaの連携を開始する、という内容だ。
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、2024年2 月13日(火)からドコモが提供する「d払い」アプリ(Android版)とJR東日本が運営する「モバイルSuica」の連携を開始いたします。これにより、「d払い」アプリ(Android版)からSuicaの新規発行のお申込みやチャージが可能となります。
(ドコモとJR東日本、Android版「d払い」アプリと「モバイルSuica」の連携を開始)
残念ながらiOS版への対応は未定だが、ともかくAndroid機種からのd払い・モバイルSuicaへのタッチはできるようになったのだ。
これはもちろん、d払いを介したモバイルSuicaへのチャージにdポイントが発生することを意味する。額はチャージ金額の0.5%(200円につき1ポイント)。そして、dポイントをモバイルSuicaの残高としてチャージすることも可能だ。
交通系ICカードは「良好な治安の証」
首都圏に住まう人にとって、Suicaは今や生活必需品のようなものである。
首都圏とは言い難い地方に住んでいる筆者自身、東京へ取材に訪れた際は必ずモバイルSuicaにチャージする。その際に用いるチャージ元はau PAY。
筆者は長年のauユーザーのため、auかんたん決済から残高を引っ張ってくるという手段が使えるのだ。
d払いでもこうした使い方ができるようになったというわけだが、それにしても日本での交通系ICカードの強さにはいつも驚かされてしまう。
かなりひねくれた見方をすれば、交通系ICカードのせいで日本ではクレジットカードやデビットカードがいまいち普及し切れないと言えるのではないか。
アメリカはクレカがないと一流の生活を送ることができない国だが、バスや地下鉄で使える交通系ICカードがないというわけではない。
ロサンゼルスで言うところのTAPカードがそれに当たる。が、このTAPカードをクレカやデビットカードに準ずる「あらゆる買い物で使える決済手段」に育てられるかと言われれば、それは難しいだろう。
アメリカ都市部の地下鉄や路線バスは治安に難があり、故に中流以上の市民は極力自家用車を使う。特に夜間の公共交通機関の利用は、肉体に自信のある男性でも相当な覚悟を要する。
会社員の女性が「今夜は終電で帰るから」と彼氏に告げる……ということはないと考えていいだろう。
日本の交通系ICカードは、盤石の治安の良さに支えられているからこそクレカをも凌駕する決済手段になり得たのだ。