金投資をNISAで行うメリット
金へ投資は、実物(地金、ゴールドバー)を直接購入する場合と金に投資する投資信託に投資する場合とがある。
実物を購入する場合、とても高いのではと思うかもしれないが、地金でも少額から積立できる貴金属会社はある。ただし、金地金は、購入時と売却時に手数料、購入時に消費税(売却時には消費税を受け取れる)、売却時には譲渡所得による所得税・住民税がかかり、確定申告が必要な場合がある。金を引き出さずに保管してもらっている場合には管理料がかかる(積立をしている等の条件を満たせば無料になることもある。)。
投資信託に投資する場合、つみたて投資枠は難しいが、NISAの成長投資枠ならほとんどの金の投資信託に投資することができる。そして、その投資信託を少額で積立投資することも可能だ。一方、NISAで購入すれば、購入時売却時共に手数料はかからず、利益は非課税で、確定申告をする必要はない。ただし、保有期間中は投資信託の信託報酬はかかる。
上記がネット証券のNISAで投資できる金の主要な投資信託だ。
概ね米国に上場する金のETFに連動する投資信託、日本国内の金価格に連動する投資信託、米国の金価格に連動する投資信託がある。いずれにしても、NY先物市場で取引されているNY金価格が世界的指標となっており、国内の金価格においてもその指標を参考に価格決定されるため、米ドルの為替リスクがある。
金融不安に備えて金を購入したのに、ドルの為替リスクを負うことになってしまう。金融不安時は、概ねドル安円高になることが多く、そのような時は金価格が変わらなくても為替で損をしてしまうことになる。
そこで、金の投資信託には為替ヘッジありという商品が用意されている。
米ドルの影響を回避するため将来の円の為替予約を行うことでドルの為替変動リスクを回避するものだ。
為替が心配な場合は為替ヘッジありも選択肢に
金の投資信託の投資先は、金のETFや投資信託、金実物資産だ。基本ドル建てであることが多い。金のETFが米国市場に上場しており、そのETFの価格に連動させている投資信託なら、そのETFはドル建であるからだ。また、国内の金価格に連動させているものでも、その国内の金価格もやはり主要な市場である米国市場の金価格を参考しているため、ドルの影響を完全に回避することは難しい。
金融不安等が起きるときに備えて金の投資信託を購入したのに、為替がドル安円高になったことにより投資信託の価格が下がってしまっては元も子もない。
そこで、金の投資信託では、為替ヘッジありを選ぶこともできる。
為替ヘッジとは、投信信託のドルを為替ヘッジすることでドルの影響を失くすものだ。
為替ヘッジありを選択すれば、米国景気が悪化してドル安円高になり為替による損を被ることを回避できる。
為替ヘッジは、あらかじめ為替予約を行うことで、海外資産購入と同時にその通貨を売って円を買う為替予約を行い、その為替リスクを回避させる。
もし、ドルの資産に投資する資産の為替リスクを回避する場合、ドル資産購入と同時にそのときの為替相場でドル売り円買いの為替予約をして為替変動を回避する。
為替ヘッジは将来の為替変動手放すことになるため、円高になったときは円高による損失を回避できるが、逆に、円安になったときは為替による利益を手放すことになる。
為替ヘッジを行うときには、将来の為替予約の日のときまでの金利を含めて同じになる為替レートで予約できる。
上図のように、1年後ドル建て商品のドルを円にヘッジする為替予約を行う場合、現在1ドル=100円のとき、1ドル=100円で為替予約できるわけではなく、現在の為替レートで1年後の金利を含めて運用したことを考慮した為替レートで予約できる。
例えば、米国金利が5%なら1年後1万ドルを運用すると1万500ドル、円の金利が1%なら1年後は円での運用が100万円(=1万ドル)が101万円となる。この1年後の1万500ドルと101万円が等しくなるところで為替レートを計算すると1ドル=96.19円で為替予約できる。
将来の金利を考慮した為替レートで予約すると、当然金利差があることから、ヘッジする円が米ドルより低ければその金利差分コストとなる。この例でいえば概ね5%と1%の金利差4%分がヘッジコストとなる。
実際の投資信託の為替ヘッジは1年のように長期では行わず短期の為替予約を繰り返し行う。そのため、短期の金利差が為替ヘッジコストとなる。
現在の実際の米国短期金利は5.5%、日本円はマイナス金利だ。
そのため、現在為替ヘッジありを選択すると、コストが米国金利と日本円の金利差約5.5%超かかり、金価格は高値圏で推移しておりあまり変動していないが、この為替ヘッジコスト分じりじり下がっていっている。
一方、コロナショック時のように日米の金利差がほとんどないときはヘッジにコストがあまりかからない。2024年春ごろと予想される日本が利上げすればその金利差は小さくなる、または2024年半ば以降と予想される米国金利の利下げがあれば金利差は小さくなり、低コストで為替ヘッジを行えるだろう。
文/大堀貴子