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耳にかけるだけ!ファーウェイの最新イヤホン「FreeClip」が示した〝常時装着〟の可能性

2024.02.29

音はナチュラルで想像以上にきちんと聞こえる、動画視聴もしやすい

 バッテリーを兼ねたケースで急速充電できるのは、ほかのワイヤレスイヤホンと同じ。充電ケースを併用した際には、音楽再生時間が36時間まで延びる。丸1日を超えているため、毎日寝る前に充電するよう習慣づけておけば、外出時にバッテリーの心配をする必要はなさそうだ。あくまでイヤホンだが、どちらかと言えばウェアラブルデバイスに近い位置づけと捉えることもできる。

通常のワイヤレスイヤホンと同様、ケースがバッテリーを兼ねている。10分の充電で3時間の音楽再生が可能。ケースのバッテリーを最大まで使えば、音楽再生は36時間まで延びる

 着け心地に加え、デザインも常時身に着けておきやすい。試用したのはブラックだが、光沢感があって遠目で見るとピアスやイヤリングのようなアクセサリーにも見える。ブリッジ部分が細く、光沢も適度なため、目立ちすぎる心配がない。それぞれのパーツが小ぶりなため、イヤホンを装着している感覚が薄くなる。機能性や装着感はもちろん、デザイン性も常時身に着けるために最適化されていると言えそうだ。

 一般的なイヤホンと比べると、耳穴とスピーカーが離れているため、音質には不安もあったが、実際に聞いてみると音質はナチュラル。やや低音が弱い印象もあるが、形状から受ける印象以上に音圧は強く、サウンドが際立って聞こえる。ただし、ノイズキャンセリングに非対応で、かつ耳がふさがれていない仕様のため、周囲の音が丸聞こえになってしまう。電車や車の中など、騒音が大きい場所では音が不明瞭になる点は、FreeClipの弱点と言えるかもしれない。

 それでも、街の雑踏程度には負けない音が出ているため、外で音楽を聞くことは可能だ。また、常時着用しやすいため、スマホで動画を気軽に再生できる。最近では、X(旧Twitter)やInstagramのタイムラインに動画が流れるのは一般的。ニュースの記事に動画が埋め込まれていることもある。文字を読むのと動画の視聴がシームレスになりつつあると言えるだろう。外出先でイヤホンがないと、ここで音を再生することができない。

SNSでは、写真や記事へのリンクと動画が等距離で並ぶ。イヤホンを常時装着しておけば、こうした動画を躊躇なく再生することができる

 イヤホンを持っていればそれを装着すればいいが、短い動画のためにわざわざカバンやポケットから取り出すのは少々面倒。FreeClipのようなイヤホンを常時耳につけておけば、こうしたことを気にせず、当たり前のように動画を再生し始めることができる。電話もサッと取ることができ、素早く反応したい時に便利。身に着けておくことで、スマホの使い方が変わる可能性も秘めている。

通知の読み上げなどで利便性アップ、アプリや機能には課題も

 また、常時身に着けておけば通知の読み上げにも使える。筆者は、「HUAWEI Eyewear II」を導入した際に、Galaxy Z Fold5とペアリングした時だけ通知を音声で読み上げるように設定していたが、FreeClipでも同じことは可能。すべてを読み上げてしまうと、さすがに情報量が多く、うっとおしくなってしまうが、ある程度厳選することでスマホを取り出すかどうかを判断できる。着け外しが前提になっているイヤホンでは難しかった使い方だ。

常にイヤホンを着けている際に便利なのが、通知の読み上げ。筆者がペアリングしたGalaxyは、この機能に対応していて便利だった

 残念ながら、こうした読み上げ設定はスマホ側に依存する。FreeClipも、ほかのファーウェイ製品と同様、「AI Life」というアプリを使って接続するが、このアプリには読み上げなどの機能は設けられていない。サードパーティアプリを使うことで同様の設定は可能だが、端末との相性もある。FreeClipの利用シーンを広げられる機能なだけに、AI Lifeなどのファーウェイ製アプリで近いことができるようにしてほしかった。

接続にはファーウェイのAI Lifeを使用する

 これはファーウェイ製品全般に共通する話だが、Androidのスマホをペアリングしようとすると、AI Lifeをサイドローディングでインストールしなければならず、少々ハードルが高い。iOS版のアプリはApp Storeにあるため、ほかのアプリと同じ手段で入手できるが、Android版はファーウェイのサイトから入手し、OSの警告を無視してインストールしなければならない。米国の制裁を受け、Google Playでアプリを配信するのが難しくなっているためとみられるが、何らかの解決策は見出してほしい。

 AI Lifeでは、サウンド効果の設定が可能。ただし、そのバリエーションは4種類と少々少ない。また、アプリを使うと、左右それぞれのダブルタップ、トリプルタップに曲の再生・停止や曲送り、アシスタントアプリの起動といった動作を割り当てることが可能だ。ファーウェイ製のイヤホンでは比較的おなじみの機能だが、タップに対する反応がよく、操作がしやすい。長押しができないなど、やや操作スタイルが限定されている気もするため、今後のアップデートに期待したい。

イコライザーの種類が少ないなど、改善の余地も

 少々気になったのは、音漏れする閾値(しきいち)が使っている本人にわかりづらいところ。その形状ゆえに、音量を上げすぎるとさすがに音が漏れてしまう。逆位相の音をぶつけることで、音が周囲に拡散するのを防止してはいるが、限界もある。Galaxy Z Fold5とペアリングし、音量をバーの6〜7割にした段階で、再生している音楽が周りの人に聞こえてしまった。厄介なのは、音が漏れていることが自分にはわかりづらいこと。エレベーターなどの密閉空間では、気になって音量を下げてしまうことが度々あった。

 これは、HUAWEI Eyewear IIでも同様だが、耳をふさがないことが、逆に音漏れの心配につながっている気がする。慣れて手動で設定すれば済む話だが、この不安感を払しょくできるような機能はぜひ搭載してほしい。音質や装着感に不満はないが、不安感の払拭は課題になりそうだ。先に挙げた通知の読み上げなど、イヤホンの新たな使い方を提案するような新機能にも期待したい。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★★
着けやすさ     ★★★★★
UI         ★★★★
音楽性能      ★★★★
音漏れカット    ★★★
バッテリーもち   ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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