リスクを承知で“投資”してみたくなる男性像とは――。
起業家は基本的に“イケメン”であったほうが望ましいと思えるのだが、そこには投資をする側の人物の身体的魅力の影響もあるというから興味深い。
イケメンと非イケメンのイケメンを見る目の違い
目に入る同性のビジュアル面の魅力について多くの男性は普段それほど気にはしていないと思われるが、そこにお金が絡んでくるとなれば否応なく“審美眼”を働かせることにもなりそうだ。
投資家にとってそれはたとえば男性起業家である。
もちろん起業においては事業計画や経営戦略の内容が重要であることは言うまでもないが、その男性起業家にどのくらいの投資資金が集まるのか、それを占う無視できない“裏の”要素はその起業家の身体的魅力であることがこれまでの研究で示されている。
起業家のルックスは投資に影響を及ぼしているのだ。
投資家から集めた資金を運用投資しているベンチャーキャピタリスト(VC)であればなおのこと起業家に対して鋭い“審美眼”を働かせていることにもなるのだが、ひょっとするとそこにVC側の身体的魅力が何らかの影響を及ぼしているのだろうか。
つまりイケメンがイケメンを見る目と、非イケメンがイケメンを見る目に違いはあるのか否かということだ。
アムステルダム自由大学のマーク・D・バールマン氏が2024年1月11日に「Frontiers in Psychology」で発表した研究では、男性起業家とVCの身体的魅力が投資行動に与える影響について分析を通じて検証している。
バールマン氏はヨーロッパのITベンチャー341社のデータを活用して各社の資金調達プロセスを分析すると共に、各社の男性起業家とそれに投資したVCの身体的魅力を10人の大学院生に評価させた。
収集したデータを分析した結果、イケメンと非イケメンのイケメンを見る目には違いがあることが示されることになった。
イケメンVCは身体的魅力のある男性起業家をおおむね好意的に見ており、最初の資金調達ラウンドでも二回目のラウンドでも一貫して相応の投資を行っていた。
一方で非イケメンVCは最初の資金調達ラウンドで魅力的なルックスの起業家が率いるスタートアップに多額の投資をする傾向が強く見られたのだが、二回目のラウンドでは起業家の身体的魅力の影響は打ち消され、場合によってはマイナスに働きさえもしていたのである。
つまりイケメンは基本的にイケメンをある種漠然と支持しており、非イケメンもイケメンを特に最初は高く評価しているものの、再検討して低く評価する場合もあることになる。非イケメンの投資行動は変わるかもしれないのだ。
イケメンがイケメンを概して好んでいる一方、この非イケメンVCの“心変わり”は、起業家が外見によって設定された高い期待に応えられなかった場合、魅力に基づく初期のポジティブなバイアスが逆転する“ビューティーペナルティ(beauty penalty)”効果を示している可能性があるという。
身体的魅力に期待し過ぎたことでそれが満たされないとより大きな失望に繋がるのである。
研究はもちろん同性愛的な観点を排除していることが前提になっているが、投資行動の側面から見てもイケメンと非イケメンの“イケメン観”には違いがあったということになりそうだ。