三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「どの地域の海外投資家が積極的に日本株売買を行っているか」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの内容は以下の通り。
昨年、4月以降の日本株の上昇を主導したのは、欧州の投資家による日本株の大幅な買い越し
日本取引所グループは、海外投資家の日本株売買状況について、「北米」、「欧州」、「アジア」、「その他地域」の4つの地域別に月間と年間のデータを公表している。
そこで今回のレポートでは、2023年の月間データを用いて、地域別に海外投資家の日本株売買状況を検証するとともに、年間データで2013年から2023年までの地域別売買状況の推移を振り返る。
はじめに、2023年の月間データからみていく。2023年は、東京証券取引所(以下、東証)が3月31日に資本コストや株価を意識した経営を企業に要請し、以降、企業の資本効率改善が進むとの期待から日本株が大きく上昇した経緯がある。
図表1は海外投資家の月間売買代金差額を地域別に示したものだが、4月から6月にかけて大きく買い越し、日本株の上昇を主導したのは、欧州の投資家であることがわかる。
日本株売買シェアは昨年通年で欧州の76.4%が最大、次いでアジア、北米、その他地域の順に
欧州からの日本株買いの動きは7月以降に一服し、8月、9月、12月は売り越しに転じたが、2023年の1年間では約2.6兆円の買い越しとなった。
海外投資家全体での年間売買代金差額は約3.2兆円の買い越しだったので、欧州の買い越しが大半を占めている。
なお、北米は約6,600億円の買い越し、アジアとその他地域は、それぞれ約54億円、約560億円の売り越しとなった。
次に、地域別に2023年の年間売買代金総額と売買シェアを確認する。海外投資家全体の年間売買代金総額は約1,199兆円で、このうち欧州の売買代金総額は約917兆円、売買シェアは76.4%と最大を占める。
次がアジアで、総額は約194兆円、シェアは16.2%だ。そして、北米が約85兆円でシェア7.1%、その他地域が約4兆円でシェア0.3%となっている。
過去10年で海外投資家の日本株売買代金は急増、欧州の寄与が大きいがアジアも存在感大
最後に2013年から2023年までの年間データを用い、地域別売買状況の推移を確認する。詳細は図表2の通りで、2013年から2023年の間、欧州が変わらず最大の売買シェアを占めていることが確認される。
近年は、欧州の売買シェアが70%台で安定的に推移するなか、アジアのシェアが緩やかに増加する一方、北米のシェアは緩やかな減少傾向がうかがえる。
海外投資家全体の年間売買代金総額は、2013年の約670兆円から2023年の約1,199兆円まで79.2%の大幅な増加となっている。
この増加率の寄与度をみると、欧州が77.5%、アジアが19.6%、北米が-18.1%、その他地域が0.2%となっており、海外投資家のなかでは、特に欧州の投資家が積極的に日本株を売買しており、また、アジアの投資家も存在感が高まっていると判断される。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい