基本は「アプリでの配車」だが…
以下、筆者が特に重要と思った点を拾い上げ、個別に解説していきたい。
まずは「運賃は事前確定運賃により決定し、支払い方法は、原則キャッシュレスであること」という点。これは海外でライドシェアを利用したことのある人なら、「むしろ当然」と解釈するだろう。
しかし、同会議で使われた別の資料(地域交通における「担い手」「移動の足」不足への対応方策について)には「アプリ導入が進んでいない地域」に関しての記載がある。
これによると、タクシー不足の客観指標化にはアプリだけではなくタクシー無線や関係者に対するヒヤリングも用いるという。その上で、今後はアプリ導入を促すとのこと。
これらを総括すると、日本版ライドシェアの配車方法は基本的にはスマホアプリだが、それが普及していない地域ではひとまず従来型の方法を用いる、ということではないか。
ライドシェア車両が加入する保険
そもそも、上のたたき台は全体的に「ライドシェアはタクシー会社が運行する」という前提でまとめられている。
「損害賠償能力 タクシー事業者が対人8,000万円以上及び対物200万円以上の任意保険に加入していること」「ドライバーについて タクシー事業者は、ドライバーに対して事前の研修(大臣認定講習を含む。)及び教育を受けさせること」「運送形態・方法について 利用者とタクシー事業者間で運送契約が締結され、タクシー事業者が運送責任を負うこと」と記載されている通り、現時点における日本版ライドシェアはタクシー会社以外の事業者が運営することは全く想定されていない。
が、そのあたりは国交省も自覚している。タクシー会社以外の事業者が日本版ライドシェアに参入するための法整備に関する議論は、今年6月に向けて行われると資料に書かれている。
ただ、もしタクシー会社以外の事業者によるライドシェア運行が認められた場合、損害賠償を賄う保険はどうするのかという声もあるはずだ。
ここは電動キックボードにも当てはまっていたことだが、今の時点で「ライドシェア用自動車保険」という商品は日本には存在しない。社内で企画されてはいるはずだが、それが形になるのには数年の時間を要するだろう。
保険商品とは「統計の世界」で、ライドシェア1,000台あたりの事故発生率はいくらというようなデータが算出できなければ保険料を提示することはできない。
もうすぐ日本版ライドシェアが始まり、国交省がどのような議論をしているか……という要素で保険商品を作れるはずはない。
Uberはあくまでも「アプリ」
日本版ライドシェアの話題は非常に流動的で展開が早い。が、当面は「タクシー会社主体の運行」という形になるだろう。
Uberを配車プラットフォームとして導入する地域版ライドシェアは既に存在するが、それはあくまでも地元タクシー会社と連携しているに過ぎない。
そうなると気になるのは運賃だが、このあたりは地域によって「タクシーより1~2割安いライドシェア」と「タクシーと同程度のライドシェア」のどちらかになるのでは……というのが筆者の推測である。
そうはいっても、この話題はほぼ毎週何かしらの大きな発表があるという状態で、筆者の記事などは結果的に嘘になってしまうほどのアクションが今後起こる可能性も。一瞬たりとも目の離せない展開が続いている。
【参考】
令和5年度第1回自動車部会 配布資料-国土交通省
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/jidosha01_sg_000025.html
取材・文/澤田真一