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ビアホールの注ぎ手たちが継承してきた「クリスプ注ぎ」とは何か?

2024.02.23

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

ビアホールの注ぎ手たちが継承してきた「クリスプ注ぎ」にこだわる

アサヒビールの前身である大阪麦酒会社が、1897年、大阪中之島に「氷室生ビール」と「洋食」を看板メニューとした「中之島アサヒ軒」が開店し、日本初のビアホール業態が誕生した。

以来、一世紀以上にわたりビール好きに親しまれてきたが、2023年にアサヒのビアホール文化を引き継いできた「アサヒスーパードライ 梅田」が閉店。アサヒグループホールディングスは外食事業からの撤退を決定したこともあり、アサヒのビアホールの歴史は幕を閉じた。

こうした状況下で、「ビールと共に歩んだボクの40数年の仕事の集大成として、ビールの大先輩たちに敬意を込めて、ビアホール文化を継承したい」と立ち上がったのが、元アサヒビール社員で、2003年に初代「Keel’s bar(キール′ズバー)」をオープンし、現在は「新橋DRY-DOCK」を経営する「キール広告社」代表の原田豊氏だ。

初代Keel’s barは、ビアホール出身の高橋康志氏の指導を受け「おいしいスーパードライ」を売りにした店。「キールのスーパードライはおいしい」と評判を呼んだが、開店から4年弱で再開発で立ち退きとなり、代わりの店舗として新橋DRY-DOCKを開業した。

2月20日に「日本一おいしいスーパードライ」を目指す、新たな「Keel’s bar」の名を冠した約90席のビアホールが、お茶の水にオープンした。

Keel’s barでは、スーパードライのタップを2系統用意し、異なるテイストが楽しめる。

中でも必ず味わってもらいたいのが、カウンターから見て右側の1番コックによる「クリスプ注(つ)ぎ」のスーパードライ。

「クリスプ注ぎ」は伝統的なビアホールの注ぎ方で、現在は主流になっている「シャープ注ぎ」の細かな泡ではなく、サクサクとした軽やかな泡が特徴。飲んだ瞬間に口の中で炭酸ガスが爽やかに弾けるのでおなかがふくれず、何杯飲んでも飽きずに楽しめる“ヴァイタートリンケン”だ。

「ビアホールのクリスプ注ぎは技術が必要で、習得するには時間がかかることもあり、時代の流れで泡つけ機できめ細かなソフトクリームのような泡をつけるシャープ注ぎが主流になっていきました。

アサヒが直営のビアホールから撤退すると聞いて、ビアホール文化を無くしてはいけないと、ビアホールの注ぎ手たちの注ぎ方をきちんと受け継ぐべく、新Keel’s barではクリスプ注ぎを取り入れました。

昔からヨーロッパで大切にされてきた、軽くてサクサクとした泡をつける“花が咲いたような泡”と、ビアホールの本場のドイツ人が『これがビールのうまさだ!』と言う口の中でガスが弾ける味わいを、ぜひ楽しんでいただきたいですね」(以下「」内、原田氏)

ビール注出装置はシンプルな構造で、タンクビールの味わいを目指すという。樽を3日間低温で安定させており、注ぎ口まで短距離で、通常に比べ20%太くしたストレートなビールラインは流速が早く、注ぎ手の技術が必要とされる。

「注出装置は通常の装置と比べ、ビールの流速が倍ぐらい早いんです。普通のビールラインは12mほどありますが、これは注ぎ口まで2mしかなく、樽から直接で出てくるという感覚。スピードが速いのでコントロールがとても難しく、安定してないときちんと注ぐごとができず、素人ではまず注げないですね。

梅新のビアホール(アサヒスーパードライ 梅田)の店長は、稀なる注ぎ手の名手でした。新Keel’s barのスタッフの様子も見てもらったんですが、ダメ出しされていましたね。スタッフは2週間以上、19Lの樽を20本ほど使って猛特訓を重ね、なんとか開業に間に合いました」

おいしいビールを提供するためにグラスの洗浄や温度管理も徹底させ、提供したときの温度が1.6℃になるように注出装置を設計している。一般にピルスナービールをおいしく感じる温度は4~8℃ぐらいとされるが、それに比べるとかなり冷たい状態で出している。

「1.6℃は低すぎるんじゃないか?と思われますが、有名なビアホール店のタンクビールは1.6℃で提供しています。提供温度が1.6℃ということは冷蔵庫の中は0℃にしないと出させません。それでうちも1.6℃目指そうと思い仕組みを考えました。冷たすぎるとおいしくなくなるというものではないんですよ」

Keel’s barの樽生ビールは9種類。スーパードライ2系統のほか、熟撰󠄀、ピルスナーウルケル、国内外のクラフトビールが楽しめる。

ビールメニューごとに異なるグラスも魅力。スーパードライ専用(約420ml)、スーパードライショット専用(約250ml)、熟撰󠄀専用(約390ml)は高品質な手吹き工法のグラスを使用。そのほか、樽の形をしたウルケル専用グラスや、「アサヒスーパードライ 梅田」で使っていたリッタージョッキも用意し、要望があれば使用するとのこと。

店内の椅子やテーブル、メニューブックの表紙は閉店した「アサヒスーパードライ 梅田」から譲り受け、開放的なテーブル配置も含め、昔ながらのビアホールスタイルを踏襲。梅田のビアホールにあった伝統的な“半立ち飲み用ベンチ”も設置している。

ビールに合わせるフードメニューも充実。ドイツ、チェコ、ベルギー、イギリスなど、ビールの歴史が長いヨーロッパで生まれたビールと相性抜群の伝統料理を提供する。中でもおすすめは、ドイツを代表する料理で、日本のビアホールではおなじみの「アイスバイン」。

豚のすね肉を長期間塩漬けにして、玉ねぎ、セロリなどを加えたマリネ液で丁寧に煮込んだ料理。スーパードライ、ウルケルとの相性抜群だ。

「クラフトビールを中心としたビアバーが昨今流行っていますが、Keel’s barは昔ながらのビアホールで、日本人に親しまれてきたピルスナービールを中心に提供する、ビアバーとは一線を画したビール店だと思っています。

ビアホールはかつては社交場でした。オープンなフロアというのは大事にして、みんながワイワイやりながらビールを楽しむ店にしたいですね」

【AJの読み】カウンター席に座れたらぜひスーパードライショットを

Keel’s barでぜひ試してもらいたいのが、ビアホールならではのクリスプ注ぎと、きめ細やかな泡が楽しめるシャープ注ぎ(下記画像)の飲み比べ。同じスーパードライの樽生でも泡や飲み口の違いがあり、飲み比べして好みの味を見つけてほしい。

個人的にハマったのが、カウンター席限定のスーパードライショット。約250mlのショットグラスで、注いですぐの状態で飲み切れるため、のど越しやおいしさをダイレクトに味わえる。

「ドイツのケルシュのスタイルを真似てショットグラスで楽しんでもらうもので、新橋DRY-DOCKでも非常に人気です。本場のケルシュは、グラスが空になったら新しいビールと交換して、コースターをグラスにかぶせてストップサインを出すまでひたすら飲み続けるわんこそばスタイルです。

カウンター席限定というのも意味があって、注ぎ手の近くの席というのはドイツでは『Stammgast』と呼ばれる常連客の席。注ぎ手が一番近くて、おいしいしいうちに飲める。そこで出すグラスは金口で、この席に座るまで10年かかると言われます。実際、ビールの一番おいしいところを一気に飲める量なので、クリスプ注ぎに一番合っているのがショットなんです」

2月26日からはランチメニューも提供。お茶の水という場所柄学生も多いため、ランチタイムは学割のメニューも予定しているのこと。

文/阿部純子

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