「最強家族プログラム」を後押しするキャンペーンを展開
今回の「最強家族プログラム」に合わせ、楽天モバイルでは紹介キャンペーンをスタートさせている。紹介キャンペーンは従来から提供されていたが、紹介者と被紹介者を合わせて、合計2万ポイントの楽天ポイントが還元される。
具体的な内容としては、楽天モバイルを紹介し、紹介された人が契約すると、紹介者には1人につき、7000ポイントがプレゼントされる。紹介する人数に制限はないが、今回の「最強家族プログラム」は20回線までなので、自分の回線を除けば、最大7000ポイント×19回線=13万3000ポイントが得られることになる。ちなみに、紹介キャンペーンは家族だけでなく、家族以外の友だちや同僚などを紹介した時にも同様に特典が適用される。
一方、紹介された側も同じく楽天ポイントがもらえる。他社からの乗り換え(MNP)は1万3000ポイントがもらえ、乗り換え以外(新規契約)の場合は6000ポイントがもらえる。ただし、ポイントの進呈が受けられるのは、はじめて楽天モバイルに申し込んだ人だけで、過去に申し込んだことがある人は対象外とされている。
紹介キャンペーンで進呈されるポイントは、利用期限のある「期間限定ポイント」で、被紹介者が楽天モバイルを契約し、4か月後から3か月間に渡って、紹介者と被紹介者にそれぞれ順次、進呈される。
紹介する方法については、メール、LINE、X(旧Twitter)、Viber、SMSなどが利用できる。いずれも紹介ページに楽天会員としてログインし、紹介したい人にメールやメッセージなどを送るしくみとなっている。被紹介者は受け取った紹介メッセージ内のボタンをタップし、楽天会員にログインする。ログインした翌々月末までに「楽天最強プラン」に申し込み、開通後にRakuten Linkで10秒以上の通話をすることで、特典ポイントが進呈される。
「最強家族プログラム」と「紹介キャンペーン」で巻き返しを狙えるか?
楽天モバイルは2022年、それまで続けていた「0円プラン」を廃止したことで、順調に伸ばしてきた契約数を一時は純減を記録するほど、落ち込んだ。その後、課題とされていたエリアについて、KDDIと新たなローミング契約を結ぶことで、人口カバー率99.9%のエリアが利用できるようになり、ローミングエリアでもデータ通信が無制限になった。2023年後半からは法人契約にも積極的に取り組みはじめ、現在は法人契約を含め、月に20万増というハイペースで契約を伸ばしはじめている。2023年12月には従来の楽天モバイル(MVNO)の契約を含めず、自社回線の楽天モバイルの契約数が600万に到達している。
しかし、その一方で、設備投資の負担は大きく、2月14日に発表された2023年度12月期連結決算では、5期連続の赤字となり、携帯電話事業のみの赤字は3375億円を記録している。これに加え、財務基盤の安定を図るため、楽天グループが23年間、継続してきた配当を無配とした。その代わり、1年間、毎月30GBまで利用できる楽天モバイルのeSIM(物理的なSIMも選択可)を株主優待として提供する。不安視されていた社債の償還は、新たに2027年満期の社債を発行することで、対応することも明らかにされた。
こうした状況下を踏まえ、今回の「最強家族プログラム」と「紹介キャンペーン」をどう評価するかだが、楽天モバイルがこれまで重視してこなかった『家族』というつながりを使うことで、今までよりも幅広いユーザーに拡販できる可能性がある。これまで楽天モバイルを契約してきたユーザーは、データ通信無制限というアドバンテージを評価していたため、一定のリテラシーを持つ層が多く、その半面、エリアや通信品質などに厳しい評価が下されることも少なくなかった。
ところが、昨年6月にKDDIとの新しいローミング協定がスタートし、auが展開する人口カバー率で99.9%のエリアもデータ高速無制限エリアとして利用できるようになり、東京23区や大阪、名古屋の一部の繁華街については、auが持つプラチナバンドも活用できるため、従来に比べ、かなり広いエリアで利用できる環境が整いつつある。
こうした状況であれば、今回の「最強家族プログラム」と「紹介キャンペーン」を使い、ライトなユーザー層を取り込むことができそうだ。たとえば、実働世代のユーザーが家族に楽天モバイルを勧めることを考える場合、家族であれば、行動範囲はある程度、把握しているだろうし、スマートフォンをどんな用途に使っているのかも想定できるため、家族が利用した時の状況を判断しやすい。もし、家族がそれほど遠くへ外出するわけでもなく、毎月何十GBもデータ通信をしていないのであれば、楽天モバイルに移行しても納得してもらえそうだ。
また、「最強家族プログラム」は対象となる家族の範囲が広く、居住地なども関係ないため、実家の両親に勧めるといったこともできるだろうし、「楽天市場は利用しているけど、楽天モバイルは契約していない」といった主婦層は、「紹介キャンペーン」でポイントがたくさんもらえることを評価するかもしれない。さらに、今回の「最強家族プログラム」と「紹介キャンペーン」をきっかけに、すでにスマートフォンを利用しているユーザーがサブ回線として、楽天モバイルを追加するケースも増えることも考えられる。
赤字が続く楽天グループは、楽天モバイルの契約数が800万〜1000万回線に達すれば、携帯電話事業の黒字化が実現するとしている。はたして、今回の「最強家族プログラム」と「紹介キャンペーン」を足がかりに、黒字化へ進むことはできるだろうか。今後の楽天モバイルの動向と市場の反響をチェックしていきたい。
取材・文/法林岳之
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。