(2)オンラインと店舗、チャネルとコミュニケーション
購買時に好まれるチャネルやコミュニケーションは、年齢によっても異なる。18歳~64歳の消費者の70%近くが販促情報をオンラインで受け取ることを好む一方、65歳以上の47%は印刷物を好んでいる。
また、18~34歳の50%以上がデジタル端末での注文を好むのに対し、55歳以上の回答は21%まで減少し、およそ8割は従来のカウンターでの注文を好んでいる。
年齢層の好みは存在するが、デジタルが果たす役割は重要だ。オムニチャネルとデジタルを活用したコミュニケーションがますますスタンダードになりつつあり、全体の40%以上がマス向けのプロモーションではなく、特定の属性に合わせた内容を受け取ることを望んでいる。この傾向は、とりわけ高所得者や若年層においてより顕著となっている。
店舗とオンラインそれぞれの買い物の課題を把握すると、店舗よりもオンラインを好む消費者の理由は、「利便性」と「商品の品揃え」という2つの重要なテーマが挙げられる。
具体的には、「店舗に出向くのは自宅で買い物をするよりも不便」、「特定の商品やサイズの在庫が少ない」、「品揃えが少ない」という理由だ。
なお、オンライン・ショッピングで最も人気のあるカテゴリーは「衣料品」と「家電製品」で、ネットでの品揃やサイズの選択肢の幅などが店舗より豊富な場合が多いためとなっている。
■店舗における購入の課題
店舗でのショッピングを好む消費者が最も重視するのは、「商品の品質」と「コスト」だ。
店舗での購入を好む層の55%は、「購入前に商品を見たり触ったりする必要がある」ことを挙げ、次いて、35%が「配送料が高すぎる」、32%は「返品に費用と手間がかかる」と回答し、オンライン注文を避けている。
■オンラインにおける購入の課題
(3)デジタル・テクノロジーの活用
クリック・アンド・コレクト、デジタル決済、宅配サービス、小売業者のモバイルアプリなどは、全体の3分の2以上の消費者がすでに利用しているか、利用を希望している。
また、ARを利用したバーチャル試着室(9%)や無人店舗の利用(10%)は現時点では少数であるが、未経験者のおよそ3割(29%:バーチャル試着室、28%:無人店舗)は、これらの新しいテクノロジーを利用することに前向きだ。
これは、新しいテクノロジーに対して消費者の好奇心や体験意欲が旺盛であることを示しており、企業にとっては重要なチャンスとなる。
■消費者が利用しているテクノロジーの使用種類
アリックスパートナーズのマネージング&パートナーで、日本の消費財・小売りプラクティス・リーダーである服部浄児氏は次のように述べている。
「2024年以降もインフレの影響が続くと、消費者は支出を引き締めコスト管理をより意識するようになります。特に中堅のプレーヤーは消費の変化に直接的な影響を受け、市場におけるポジショニングについて重要な戦略的決定を下す必要があるでしょう。
業界内では事業成長や生き残りのためにカテゴリーを越えた競争が起きることが見込まれ、企業はコスト削減、運転資本の最適化、M&Aなどの競争力の向上や差別化のための打ち手を講じると見ています。
消費トレンドの変化を正確に捉えて事業計画や事業のオペレーションを調整できる企業こそが、最良のポジションを築き、消費が回復するまでの不安定な事業環境を切り抜けられるでしょう。」
<2024年欧州・中東の消費者トレンドに関する調査概要>
時期:2023年10月~11月
実施:アリックスパートナーズ
対象:英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の消費者1万人超
内容:2024年の欧州・中東の消費者の消費意欲や嗜好、購買習慣やチャネルについて
出典元:アリックスパートナーズ
構成/こじへい