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AI祭りだった「CES2024」、味覚共有に驚いた「docomo Open House'24」から見えてきたスマホの未来

2024.02.18

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はデジタル業界の見本市「CES 2024」とドコモの展示会イベント「docomo Open House」について会議します。

CES 2024から見えた今後のデジタル業界とは

房野氏:毎年ラスベガスで開催される、デジタル関連の大型イベント「CES」が2024年も開催されました。石川さんは現地に取材にも行かれていましたが、いかがでしたか?

房野氏

石川氏:CESはいろいろな見方があるので、あくまで石川目線ではありますが、プレスデーと一般公開の日がある中で、プレスデーの取材をする限りは、〝AI祭り〟だなという印象でした。AIといえば目を引くというか、マーケティング的にAIという単語を使っている気がします。

 例えばフォルクスワーゲンは、車にChatGPTを乗せて、カーナビを進化させる、サムスンはいろいろな家電製品がAIに対応している……など、大々的に言っているけれど、実は10年くらい前から同じようなことを言っているんですよ。冷蔵庫にカメラを搭載して、中の食材を管理できるとか。ちゃんと生成AIをやっているところもあれば、IoTやスマートフォンの延長線上で、AIというワードを付けて、注目を浴びているようなところもある。

 特徴としては、LGのように自社で生成AIをやっているところもある一方で、ソニー・ホンダモビリティのアフィーラという車では、マイクロソフトと組んでやると発表している。AIは、一問一答ならまだできるけど、会話は蓄積していくものなので、ぶれない解答をするのが大変。AI時代になっていくと、マイクロソフトやグーグルのような企業と組まないといけなくなるかもしれません。

 CES全体としては、AIとモビリティが盛り上がっていましたね。スマートフォン関連は、別のライターさんにお願いしようかな(笑)

石川氏

法林氏:結局、CESに登場するスマートフォンは、日本で販売されるの? という話に留まってしまう。そういう意味では、毎年2月に開催されるMWC(モバイル機器見本市)のほうが、これからのテクノロジーが話題になり、目新しい情報が多いです。

 また、AIに関しては内容が細分化してきている。例えばマイクロソフトが全個体電池の素材を発見するのに、AIを使ったというニュースもあります。これまではトライ&エラーで探すしかなかったものを、わずか2週間で見つけたそうです。こういう部分も含めて、マイクロソフトがいまだにWindowsの会社だと思っている人は、認識を改めないといけません。

 業界全体として、AIを指向しているのは見えるけど、なににどう活かしていくのかが、今後のカギになりそうですね。

法林氏

石川氏:AIで言うと、先日発表された「Galaxy S24」シリーズに搭載される、「Galaxy AI」もびっくりしました。デバイス上で通話中に翻訳ができるとか、こういうことがスマートフォンでもっとできるようになっていくと、機種変更しようかなと思えるユーザーも増えるのではないでしょうか。

「Galaxy S24」シリーズ

石野氏:KDDIの高橋社長も、今年はAIに期待と話していましたね。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石野氏

石川氏:昨年開催された、クアルコムの「Snapdragon Summit 2023」でも、オンデバイスAIは注目されていましたし、これでいろいろなメーカーのスマートフォンが進化すると面白いけれど、一方で日本のメーカーはどうするのかは気になるところです。

 あと、Galaxyはグーグルと手を組んだけれど、本当にそれでいいのかという疑問もある。Galaxy S24シリーズは面白いスマートフォンになりましたが、それってPixelシリーズと差別化ができるのかな。

房野氏:CESには、日本の通信キャリアは出展していましたか?

石川氏:いませんでした。海外のキャリアも出ていませんでしたね。

石野氏:「5G」で盛り上がっていたころの面影はないんですよ。本当に、バズワードを消費するためのイベントみたいになってしまっていますね。

石川氏:そうそう。

石野氏:スマートフォンやIoT、5Gといったワードは10年くらい続いて、ドンピシャのものもよく展示されていましたが、ここ最近のモビリティやAIは、現地まで行って取材しても、得るものがあまりなくなってきたなという印象です。

法林氏:CESは結局、アメリカ市場に対してアピールしているからね。CESで登場したものが日本で発売されるのかというと微妙だし。

石川氏:CESの1週間後にサムスンがGalaxy S24の発表をしたけど、どうせならCESで発表すればいいのに。スマートフォンのチームと家電のチームが、サムスン内部で別の動きをしている感じがしました。CESはもちろん、家電の発表会なんですが、Galaxyの話は1つも出ませんでしたからね。

法林氏:白物家電とモバイル系の歩調が合わないのは、いろんなメーカーである話だからね。

石野氏:しかもサムスンは、社内カンパニーというか、それぞれの事業体に社長がいるメーカーですから。

法林氏:逆にいうと、それでも1つの会社として成立しているのはすごいことだよね。

日本ではドコモが展示会イベント「docomo Open House」を開催

房野氏:日本では、ドコモが毎年開催する展示会イベント「docomo Open House」を開催しましたね。

石野氏:規模感が毎年のように変わるイベントなんですよ(笑)

石川氏:徐々に出世している気がするよね。昔は横須賀リサーチパークが会場だったのが、お台場の科学館になり、ビッグサイトの後に赤坂インターシティがあり、オンラインを挟んで、今年は国際フォーラムで開催しました。

石野氏:ビッグサイトで開催した時がピークだった感じはしますよね(笑) 「docomo 5G」っていう大きな看板があったし。

房野氏:今年はそういう目立った看板がなくて、イメージ写真を撮るのに少し苦労しましたね。

石野氏:コスト削減をした感じは否めません。ただ、面白いものが見れたというか、MWCの前哨戦のようなイメージにはなりましたね。

石川氏:そうだね。オープンハウスで発表した、味覚の共有ができるマシンといったものを、そのままMWCに持っていくのかな。

法林氏:味覚の共有は、面白いと思ったけど、理解するのに少し時間がかかるよね。

石川氏:展示ではトマトスープでしたが、ただ味を再現するのではなく、「子供が味をどう感じているのか」を再現しています。

石野氏:複雑なことをしていますよね。

石川氏:確かに、普通のトマトスープの味を出すだけでは、あまり意味がないですからね。

石野氏:それでも、ネットショッピングとかで、売り物の味を購入前に再現できるといった使い方には、意味はあると思います。今回ドコモがやっていたのは、赤ちゃんが感じている味を再現したりとか、テレビで食レポをしている人が、実際にはどう感じているのかが分かったりといった使い方ができるというものです。

法林氏:一応、使用前にアンケート形式の味覚試験をして、それを数値化しているので、赤ちゃんやペットには使えません。

 子供が感じている味を再現するのはいいけど、逆向きの話もある。味覚を感じることって、子供のころからの体験の積み重ねによってできている部分もあるから、味の教育的な使い方もできると思う。ドコモの人に話しても、何も反応してもらえませんでしたが。

石川氏:あと、子供の味覚をお母さんが把握する、お父さんの味覚をお母さんが把握する、という風にやっていくと、味が散らかりそう(笑)

石野氏:実際に使うとすると、誰かの味覚に合わせて変換するのではなく、ネットスーパーで売っている食品はこういう味っていうデータを出すといったところが現実的かなと思っています。子供の感覚になれば、味のチューニングがしやすくなるかもしれないけど、調節するたびに子供に味見をさせるのは面倒ですよね。

石川氏:ある意味、味の共有はCES向きだなと思っています。ドコモは、通信関連はMWCに持って行って、変化球的な展示はCESに持っていくと、結構バズるかもなと思いました。

石野氏:確かにCES向きですね。

房野氏:味覚の共有以外には、なにか気になる展示はありましたか?

石野氏:ほかには、テラヘルツの研究とか、HAPS(低軌道衛星)をやっているという話がありましたね。

法林氏:あとはメタバース関連。

石野氏:メタバース内のNPC(Non Player Character)をAIで簡単に作れるようにするとか。

石川氏:脳の海馬の萎縮を、AIで予測するといったものもありましたね。個人的には、もう少しメディア向けのプレゼンを頑張って欲しかった。最初に会議室に集められたけど、プロジェクターがあるにも関わらず、ひたすら口頭でしゃべっていた。

石野氏:資料もない。

房野氏:それなら、早く展示を見せて欲しかったですよね。

石野氏:確かにちょっとだけ、もやっとしましたね。

房野氏:石川さんの電気自動車と同じ車種が、会場で使われていましたね(笑)

石川氏:緊急時に電気自動車を基地局に持って行って、電源の代わりにするというものだけど、電源にしちゃったら自走できなくなっちゃう。そもそも、災害時には充電するステーションも倒れていて、基地局まで走れない可能性もある。ちょっと、電気自動車ユーザーとしての視点が抜けているかなと思いました。

石野氏:ただ、複数の充電スポットに対して、どのように電気自動車を走らせれば、効率的に基地局に電源を供給できるのかを、AIを使ってシミュレーションする技術も展示されていましたね。

法林氏:イメージとしては、ウーバーの配車システムと、充電スポットと基地局を組み合わせたような感じだね。

石野氏:そうです。ただ、災害時にその充電スポットが使えるかわかりませんよねって聞いたら、「そこが課題です」と。そこってめちゃくちゃ大事で無視できないじゃんって驚いたけど(笑)

法林氏:一般の人に、将来的に結びつくもので言えば、高い周波数を使う準備をしているというところ。

房野氏:6Gに絡んでいく技術ですかね。

法林氏:そういうことでしょうね。ネットワークの展示スペースでは、意外とみんな、「なんで繋がらないんだ」って突っ込まなかったよね(笑)

房野氏:パケ詰まりに関する説明などはありませんでしたね。

法林氏:聞けば教えてくれたかもしれないけど、具体的な対策内容のデモはなかった。

石野氏:ミリ波を活用して、リアルタイムで各端末とかVRのヘッドセットと接続するといった説明もありましたね。あと、ゲームに活用する話も。各端末に、一斉にARデータを送って、リアルタイムに楽しめるコンテンツなども展示されていました。まあ、スカイツリーでのイベントでも発表したことがある展示だけど。

法林氏:以前、KDDI総研が踊っている人の姿をワイヤレスで遠隔地に伝送し、立体的なホログラムに投影するというデモをやったことがあるけど、研究畑という点で見ると、今回のオープンハウスは、そこまでインパクトのあるものがなかったなという印象です。

石野氏:強いて言えば、やっぱり味覚の共有ですかね。昨年は触覚を共有するという展示があったので、それの延長とも言えます。

石川氏:人間基盤の拡張という話だね。

石野氏:そうです。6G時代になると、超低遅延で大容量のデータ通信ができるので、味を共有するといったユースケースのデモをしていた。ただし、ドコモにはしっかりとデータ通信ができていないという、現実の問題がある。遅延がどうのこうのという前に、ネットワークをちゃんと通そうよという話です。ミリ波もそうで、ミリ波を活用すれば、こんなゲームができる、スタジアムで活用できるという話がある。ただ、一方で、じゃあその基地局を、まず真っ先に渋谷駅周辺に設置してよっていう気持ちになります(笑) 持っている技術はすごいし、しっかりと研究はしているけど、実装はまだまだです。

……続く!

次回は、「Galaxy S24」シリーズについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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