■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、端末の割引価格改正でスマホの価格はどうなるのか、会議します。
1年間使用&返却で〝1か月1円スマホ〟を編み出したソフトバンク
房野氏:電気通信事業法のガイドライン改正で、2023年末は端末の駆け込み需要がありましたね。年明け後、スマホの価格はどうなっているのでしょうか。
石川氏:ガイドラインが改正されて、割引の上限が8万円の端末は4万4000円まで、2万円の端末は50%までに変わりました。それによって端末の価格が高くなる、買いにくくなる、ということで、2023年末に駆け込み需要が家電量販店を中心として発生しました。「これから端末販売は冬の時代突入だな、困ったもんだな」……と思っていたら、2023年12月26日に「ソフトバンクは明日から新しい売り方をやります!」と言い始めた。
石野氏:やっぱり期待を裏切らないソフトバンク(笑)
石川氏:ガイドラインを無効化する施策。
法林氏:無効にはしていない(笑)
石川氏:ちゃぶ台をひっくり返す、という感じで、まさかの「1円端末」を実現した(笑)
法林氏:2023年11月のモトローラの新製品発表会で、ソフトバンクの人が「(ガイドラインが変わっても)そんな劇的に、スマホの価格は変わらないですよ」と言っていたけれど、こういうことだったのか……という感じ。
石野氏:ただ、実質負担が2年で24円だったのが、1年で12円に変わっている。1年で機種変更することを一般の人に勧めるのは、ちょっと無理だなというか。若干、見せかけの実質価格という風に感じます。
石川氏:良い面と悪い面があって、確かに端末価格が安ければ売れ続けるだろうし、ショップとしてもお客さんが来る機会が増えるので、新しい料金やオプションを勧めたりして販売促進できる。これって業界的にはハッピーだよねっていう感じがするけれど、石野さんが言うように、本当にみんなきっかり1年で機種変更するかというと結構怪しくて、たぶん多くの人は1年経っても機種変更しないでダラダラ使い続けて、結局はしっかり端末代金を分割で払っていく感じになる。それが本当にユーザーにとって良いことなのかというと、うーんと思うところはあるかな。ソフトバンクに端末を納入していないメーカーの人の中には「あの売り方、どうなんですかね」と突っ込みを入れている人もいる。
石野氏:2年使っても、実質負担額が大幅に上がるわけではない。5万円とか3万円程度で使えるので、ユーザーを騙すようなひどい仕組みではない。
法林氏:実際、1年で機種変更をするのはスマホが好きな人たちだけで、そうじゃない人はもう1年使うこともできる。2024年の年末に〝Xiaomi 14T Pro〟が登場するかどうかは知らないですが、新型に買い換えやすくはなる。
石野氏:出なかったらふざけるなって思いますよね(笑)
法林氏:これをiPhoneに当てはめたら、毎年買い換えるユーザーにとってはラッキーな仕組み。
石川氏:2023年末に家電量販店などでは「ラストチャンス!」みたいな触れ込みで、1円スマホが売られていたけれど、あれを見ると「1円」の立て付けって実際、トータルで4万円しか割り引いていないんですよ。数字のマジックで、支払当初に4万円ぐらい引いていて、分割の仕組みで「1円」の設定になっていた。案の定、支払い期間を2年から1年に変更するウルトラCで、〝新たな1円スマホ〟に作り替えたという感じがする。
房野氏:これって、いわゆる残価設定ローンの仕組みですよね。
法林氏:そう。今までのも残価設定ローン。ただし、残価の期間を変えてきた。
石川氏:そして、支払当初と後半で払う額を変えている。
石野氏:ソフトバンクショップに行くと、実際は電気通信事業法じゃなくてガイドラインの改正なんですが、「電気通信事業法改正で実質12円!」みたいな触れ込みの機種が並んでいて、さもガイドライン改正は大歓迎です、みたいな煽り文句があった(笑)
石川氏:駆け込み需要で買った人が、ちょっと不憫だなと思った。12月の段階であれだけ駆け込み需要が出ていたけれど、とは言え我々は、そんなに変わらないだろうと、なんとなく予感していたわけですよ。でも、キャリアに取材しても当然、事前には教えてくれないし、確たることは言えなかった。そんなに焦って買わなくてもいいんじゃないのかな、と思っていたら、やっぱりそうか、みたいな。
石野氏:でも、同じXiaomiでも、2年で24円になっていたのが1年で12円になって、急いで機種変更しなきゃいけなくなった(笑) ゆったり使いたい人は駆け込んでおいて良かったのかなと。