2017年発表のD8000の構想当初から研究開発を続けてきた製品
国内オーディオメーカーのfinalは、同社Dシリーズの新たなフラッグシップヘッドホン「D7000」を2024年2月29日より発売を開始する。
final公式ストア価格は39万8000円。現在、発売に先駆けて予約を受付中だ。
Dシリーズは、「誰もがわかる圧倒的なサウンドクオリティを持った製品」をコンセプトに2014年より開発がスタート。
D7000は、理想的な構造設計を模索する中で、2017年発表の初代フラッグシップヘッドホンD8000の構想当初から研究開発を続けてきた製品になる。
新設計の「ピナ アライン ディフューザー」および、より高効率な「エアフィルムダンピングシステム(以下AFDS)」を搭載したドライバーの開発を経て、D8000およびD8000 Pro Editionに並ぶ新しいフラッグシップとして満を持して製品化を迎えた。
■新開発「ピナ アライン ディフューザー」
最新の音響設計が施されたプロフェッショナルレコーディングスタジオにおいて、最新のスタンダードとなりつつある拡散(=ディフューズ)による音響調整の考え方をヘッドホンに投入した技術だ。
D8000の開発初期にディフューザーを搭載するというアイデアはあったが、ヘッドホンのハウジング内部という特殊な条件において適切なものを開発するのには長い時間が必要だったという。
また、測定器による理想的な条件下での測定では良い結果が出る一方、実際の耳で聞くと、外耳(ピナ)の形が人によって異なるため、音質に大きな差が発生。
この問題を解決するために、同社では「さまざまな外耳の形状に合わせたシミュレーションと実際の聴感実験を繰り返し行ない、最終的にどのユーザーにも最適なディフューザーの形状に辿り着きました」と説明している。
■平面磁界型の繊細な高域とダイナミック型の量感と開放感のある低音の両立
従来の平面磁界型は振幅が大きくなる低域で振動板がマグネットに接触してしまうため、ドライバーユニットが再生可能な低音の最低周波数を上げる必要がある。
そこで不足する低音を補うため、イヤパッド内を密閉し、振動板の前部を閉じられた空間にしている。
これはイヤピースで密閉するタイプのイヤホンが、小さなサイズにも関わらず、低音域まで再生できるのと同じ原理だ。
その結果、イヤパッド内を密閉することで低い周波数帯域まで低音を再生することができるが、イヤホンと同様の閉じられた空間内で再生される低音となる。
これに対してD7000では、同社独自の「AFDS」によって、振動板がマグネットに接触する問題を解決したため、ドライバーユニットが再生可能な低音の最低周波数を下げることが可能になった。
通気性のあるイヤパッドと併せて、優れたダイナミック型でしか実現できなかった、量感と開放感を両立した低音の再生を可能にしている。
一方、繊細な高域を再生するには、振動板が軽量であることが何よりも優先される。
D7000は、同じ直径のダイナミック型と比べて振動系重量が約1/3と軽量になっており、超軽量フィルムの振動板に極めて薄いアルミ箔のコイルがエッチングされる構造。
このため、ダイナミック型では不可欠だったコイルと振動板を接着するための接着剤を使う必要がなくなり、接着剤に起因する問題を根本的に解決、繊細な高域の再生を実現した。
また、設計全体を見直すことにより、D8000・D8000 Pro Editionと比べて約16%の軽量化に成功。さらに、ヘッドバンドとイヤパッドにドライな肌触りと耐久性を兼ね備えた和紙を使用した特殊な生地を採用することで、高い耐久性を実現している。
■D7000の主な仕様
型番/FI-D7PAL
筐体/アルミマグネシウム合金
ドライバー/AFDS平面磁界型
ケーブル/OFCケーブル6.3mm/3m
感度/89dB/mW
インピーダンス/50Ω
質量/437g
コード長/3m
関連情報
https://final-inc.com/products/d7000-jp
構成/清水眞希