新たな薬剤耐性大腸菌の広がりに科学者が警戒
中国の小児病院で、抗菌薬に耐性を持つ大腸菌が新たに確認された。
英国の研究グループによると、中国の病院で最も一般的となった薬剤耐性大腸菌は、最後の砦とされるカルバペネム系抗菌薬にも耐性を持つ配列タイプ(sequence type;ST)410に属する大腸菌(ST410)であるが、中国の小児病院で発生した2件の大腸菌アウトブレイクの背景には、B5/H24RxCと呼ばれるST410より強毒性の大腸菌が関与していたことが判明したという。
英バーミンガム大学微生物学・感染症研究所所長のAlan McNally氏らによる研究で、詳細は、「Nature Communications」に2024年1月12日掲載された。
この変異株は、非常に感染力が強く、従来の大腸菌より増殖スピードが速く、より多くの害を生物に及ぼすと研究グループは警鐘を鳴らしている。
McNally氏は、「この新しい変異株は、抗菌薬に対する耐性が強くなるとともに病原性も増している。これは、これまでには見られなかった憂慮すべき傾向だ。この大腸菌が中国国外にも広がっていることが確認されている。世界中のサーベイランスラボが、この大腸菌を警戒すべきだ」と話している。
McNally氏らはこの研究で、2017年から2021年の間に中国の26の省で入院患者から採取されたカルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ大腸菌(CREC)の388の分離株のゲノム解析を行った。
これらの分離株は主に、尿(111点)、痰(64点)、血液(47点)の検体から分離されたものだった。
その結果、これらの株の中で最も多く認められたSTはST410(109株)であり、次いで、ST167(41株)、ST131とST617(12株ずつ)の順であった。
2015〜2017年に実施された研究では、ST410はST131、ST167に次いで3番目に多いSTであったことから、CRECのポピュレーションが変化したことがうかがわれた。
ST410についてさらに詳しく解析したところ、通常よりも高い毒性や感染力を持つB5/H24RxCと呼ばれるST410のクローンが同定され、このクローンが、中国の小児病院で生じた2件のアウトブレイクの原因菌である可能性が示唆された。
研究グループは、B5/H24RxCは、2006年に特定され、2015年から2021年の間に中国以外の10カ国で分離されたB4/H24RxCの進化型である可能性があると述べている。
論文の筆頭著者である、英ケンブリッジ大学獣医学分野のXiaoliang Ba氏は、「本研究は、大腸菌のような臨床的に重要な病原体における抗菌薬耐性の進化を浮き彫りにするものだ。また、世界的な公衆衛生において深刻化しているこの課題に対処するためには、各国が互いに協力しあって取り組むことが喫緊に必要なことを強調する結果だ」と述べている。(HealthDay News 2024年2月1日)
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写真:大腸菌の電子顕微鏡写真 Photo Credit:U.S. Centers for Disease Control and Prevention
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41467-023-43854-3
Press Release
https://www.birmingham.ac.uk/news/2024/new-and-highly-infectious-e.-coli-strain-resistant-to-powerful-antibiotics
構成/DIME編集部