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能登半島地震が問う防災DXの重要性、自治体に求められるのは常に被災前夜を過ごしているという認識

2024.02.17

支援する側のDXも重要

 これは支援する側にとっても重要なことで、今回の能登地震では半島という地理的な条件のために、被災地入りすることが難しい局面がありました。戦争では兵站の考えがありますが、すなわちロジスティクスです。陸路や海路で生きていることはどこか、災害の度合いが少ない箇所に何が残存していて、活用できるものはあるのか。そういった情報が集積・管理されてこそ、支援の効果が増します。

 ですので、さきほどのカードリーダー設置場所と同様ですが、平常時のDXが成立していればいるほど、復興支援のロジスティクスに役立つ情報が集約できるということになります。もちろん、自治体と国との連携が必要でしょう。

 先程の「申告・申請」ですが、これは被災者と行政のコミュニケーションでもありますので、常にスマートフォンで最新情報が得られ、それに応じて被災者も漏れなくキャッチアップできる。このためには電源や電波といったハードウェアインフラが堅牢である必要があります。

 これらをクリアしていくのは、時間も予算もかかりますが、いざという時のために、いや、その時はもう迫っているのだと考えて取り組むべきです。

私たちは常に「被災前夜」を過ごしている

『シン・ID戦略』の中でもお話しさせていただいたのですが、こういったときに安心して地域住民の情報を預けられる自治体となっている必要があります。日頃のDXを躊躇している場合ではなく、常に「被災前夜」を過ごしているのだという認識を持ち、来るべきその日に「こんなこともあろうかと」と情報インフラ基盤が整備されているというのが理想です。

 もちろん、防災DXが論じられる度に「地方自治体においては、防災といえどまだ見ぬ未来への予算はつけられない」という現実が立ちはだかります。

 それは、現実の課題に対処するのが自治体の役目のほとんどであることから、至極当然のことではあるのですが、そのままではもし今、大規模な震災が発生したらどの自治体であっても能登半島と同じ状況になります。

 つまり、どんな状況の人がどこにどのくらいいるのかという被災者情報が把握できず、先の記事のように応急的に何らかのIDを発行して把握に努めるところから開始しなければならない、という状況になります。

 都市など人が多い地域では、その事務処理だけでパンクしてしまうだろうということが容易に想像できます。

 もちろん、地域を壊滅するような地震や台風はまだ来ないだろう、そんな不要不急の時に、例えば大きな予算を確保して自治体が「被災者向けサービス」をハンドリングするスマホアプリを開発したり、自治体の中でもどこがどうなるかわからないという「まだ見ぬ被災地」のために情報インフラを整えて民間も誘導して準備しようというのは、難しい話です。

 やる気に満ちた県知事が言い出したとしても、予算規模に応じて議会も紛糾してしまうと思います。

 しかし、「令和6年能登半島地震」の今こそ、全国の自治体が、起こりうる災害に対して今以上に、デジタルの効用を考えて、取り組んでいくべきなのです。

連載小説『TOKYO2040』では…?

 DIME本誌で連載している小説『TOKYO2040』では、単に2040年の近未来を描いていますが、舞台背景として2025年に「令和関東大震災」が発生し、そこから復興しつつあると仮定して物語を展開しています。準備が進められていた東京湾AI防災圏構想がかろうじて奏功したことから首都圏は壊滅したが復興の段取りは早く、15年間で人手不足を補うためにより一層DXが加速した想定です。その中で、過疎地を含めた広域連合的な考えと、震災で首都機能を失いかけた反省もあって道州制への議論が再燃し、いずれ東京は「州都」となるとしています。

 被災と避難所生活で再び勢いを増した感染症による局所的な人口減があり、公務員も減っていて職員は頻繁に応援に駆り出されますし、街では警備ドローンや無人コンビニ、自動運転バスなどが、夢の未来道具としてではなく、必要故に配備されたという状況です。バックナンバーも『@DIME』にて公開されておりますので、本コラムと合わせてぜひお読みいただければと思います。

文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。

このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。

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