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ヒエラルキーは、日本の企業の構造を語る際によく出てくる言葉です。さまざまな場面で使われるので、自分の知っている意味で合っているのか、不安になる人もいるのではないでしょうか。言葉の意味や使い方、併せて覚えておきたい用語などを見ていきましょう。
ヒエラルキーとは?意味や類語との違いを解説
ヒエラルキーはビジネスシーンだけでなく、さまざまな分野で聞かれる言葉です。他の言葉と組み合わせて使うことも多く、正しい意味が分からなくなる場合があります。意味や語源、よく似た他の用語との違いをチェックしましょう。
■ピラミッド型の階層体系を指す
上下関係によってピラミッド型に階層化された構造を、ヒエラルキーと呼びます。上に行くほど地位が高く、下に行くほど地位が低いことが特徴です。
例えば、企業で使われるヒエラルキーは社長や代表取締役などの上層部を頂点にし、最も下が一般社員となります。
元々は、カトリック教会で階層を表す際に用いられた言葉です。カトリック教会の聖職者は、上から教皇・枢機卿・大司教というように序列が決まっています。最も下が一般信徒という位置付けです。
また、『ヒエラルヒー』はドイツ語、『ハイアラーキー』は英語での読み方であり、意味に違いはありません。
■ヒエラルキーとカーストの意味の違い
カーストもピラミッド状の序列となっているので、ヒエラルキーと同じようなものだと思われがちですが、全く違った性質を持つものです。
カーストはインドの身分制度であり、生まれたときから決まっています。憲法上はカースト制度は廃止されたことになっていますが、まだまだ根強く残っており、問題になるケースが少なくありません。
ヒエラルキーは、階層に属する人が入れ替わる点が大きな違いです。一般社員が係長や課長などに昇進することも、転職などによって地位が変わることもあります。
また、カースト制度は下へ行くほど差別が大きくなりますが、ヒエラルキーは単に階級や階層という意味で用いられることが特徴です。
ヒエラルキーを言葉としてどう使う?
日常会話の中でヒエラルキーを使う場合、どのような状況が考えられるのでしょう。使い方と例文を紹介します。
■ヒエラルキーの使い方・例文
ヒエラルキーは高い・低いで表現し、『ヒエラルキー○○』というように他の言葉と組み合わせて使用することもあります。使い方を理解するため、例文を見ていきましょう。
- ヒエラルキー型組織には、多くの中間管理職が必要だ
- ヒエラルキーが低いわれわれにできることは限られている
- 生徒間のヒエラルキーが問題になっている
ヒエラルキー型組織は日本の企業における一般的な構造であり、組織が大きくなるほど一般社員を管理する体制を整えるために、多くの中間管理職が必要となる傾向です。
ヒエラルキーの下層にいる人物が、自虐的に使用するときに用いることも少なくありません。
また、同じ学校の生徒同士など、本来はヒエラルキーが存在しないはずの者同士に上下関係ができる場合があります。インドの身分制度に例えて『スクールカースト』と呼ぶこともあり、良い意味では使用されません。
ビジネスで使われるヒエラルキー組織とは?
ヒエラルキーは単体で使用するだけでなく、他の言葉と組み合わせる機会が少なくありません。ビジネスシーンでよく使われる、ヒエラルキー組織の意味やメリット・デメリットをチェックしましょう。
■ヒエラルキー組織の意味
ヒエラルキー組織は、社長や代表取締役などを頂点とした縦割りの組織のことです。企業の上層部が意思決定をする、トップダウン式のスタイルとなっています。
企業の規模や業態によって若干の違いはあるものの、社長・専務・常務・部長・課長・係長・一般社員などの順番で成り立つ構造です。
日本の一般的な企業で採用されることが多く、上から下へと指示が下りていきます。
■ヒエラルキー組織のメリット
ヒエラルキー組織には、責任の所在を明らかにしやすい点や、上層部の考えを浸透させやすいなどのメリットがあります。
一般社員を係長が束ね、係長は課長から命令を受ける流れとなっていて、全体的な管理がしやすいこともメリットです。指揮系統が一つなので、どこから来た指示なのかが分かりやすく、責任の所在がはっきりとします。
また、上層から下層に指示が伝わっていくことから、トップに位置する経営陣の理念や意向を浸透させやすい点もメリットです。ヒエラルキーの下層にいる従業員が、企業の一員として何をすべきなのかを意識して行動できます。
■ヒエラルキー組織のデメリット
下層にいる人が素晴らしいアイデアを出しても、意思決定までに時間がかかるところがヒエラルキー組織のデメリットです。
一般社員からリーダーに伝わり、リーダーがその上長へ伝えるというように段階を経て話が伝わっていくので、最終決定までにどうしても時間がかかってしまいます。大きな企業ほど、このデメリットが顕著です。
良いアイデアを実行に移すまでに時間がかかってしまうと、ライバルに先を越されてビジネスチャンスを逃すことになりかねません。
また、上層部に依存する形になるので、従業員の主体性が低くなりやすい点も問題です。下から上に意見が通りにくい状態だと、ヒエラルキーが低い従業員の不満がたまる原因にもなります。
企業におけるヒエラルキー以外の組織体系
企業や団体などの組織の形態は、階級化されたものだけではありません。ヒエラルキー組織のデメリットを解消するため、他の形態を採用する企業もあります。
ヒエラルキーと併せて覚えておきたい、反対の意味を持つ言葉やマトリクス組織について理解を深めましょう。
■ヒエラルキーの反対「ホラクラシー組織」
組織内で階級を設けない形態を『ホラクラシー』といい、役職や階級から成り立たない構造の組織をホラクラシー組織といいます。
ホラクラシー組織は管理職を必要とせず、それぞれが大きな責任と決定権を持っていることが特徴です。組織は『サークル』の単位で表され、まとまりを持たせるために進行管理役が設けられます。
メリットは、個々の役割が明確なので生産性が高く、組織に属している人全体の自主性が高いことなどです。一方で、チームワークを保ちづらく、個々のストレスが大きいなどのデメリットもあります。
■複数の組織に所属する「マトリクス組織」
マトリクスとは、基盤や母体を指します。一般的には数学用語として用いられる、格子状に数字を配列したものを指す言葉です。
経営の分野では製造・開発・営業などの職能と、事業部を網の目のように組み合わせた形態の組織を、マトリクス組織といいます。従業員は、職能部に属すると同時に事業部にも属しているので、複数の命令系統に従う形です。
複数の目標に対して同時に取り組む必要があるときに力を発揮する形態であり、状況に応じて柔軟に対応しやすくなります。
ヒエラルキーを用いた関連用語もチェック
一般的なビジネスシーン以外でも、ヒエラルキーに関連した用語が使われることがあります。ヒエラルキーとは何かをより深く理解するために、知っておきたい関連用語もチェックしましょう。
■ヒエラルキーコントロール
リスクマネジメントの分野で必要とされる概念の一つに、ヒエラルキーコントロールがあります。看護業界で使用されており、患者の体液や薬剤などから身を守り、看護師の安全と健康を守るために必要な考え方です。
例えば、ピラミッドの最上位には毒性の強い薬剤の除去や置換、最下位には看護に従事する人がマスクや手袋などをして身を守る、個人防護具が配置されています。
効果や優先度、実践難度が高い順に上から下へと配置され、階層ごとに役割や対策が定められていることが特徴です。
■ビジュアルヒエラルキー
ビジュアルヒエラルキーとは、見てもらいたい情報に順位を付け、視覚的に階層化することです。デザイン業界で使用される用語で、ユーザーに伝えたい情報の優先順位を視覚的に整理する際に用いられます。
重要な情報より補足的な情報の方を目立つデザインにしてしまうと、ユーザーに最も伝えたいメッセージが伝わりません。ユーザーの目的を考えた上で、デザイン性やユーザーにとっての使いやすさを損ねないようにデザインすることが重要です。
主にデザインの現場で、ディスカッションをする際などに「もっとビジュアルヒエラルキーを意識してほしい」のように、使用します。
構成/編集部