音声通話のリアルタイム翻訳は精度に課題も、機能面では間違いないスペック
音声通話も翻訳も、他機種にはないGalaxy独自のAIを活用した機能だ。電話を発信した状態で「通話アシスト」→「ライブ翻訳」というボタンを押していくと、翻訳が有効になる。電話がつながった後、自分が話すとひと呼吸おいたあとそれが外国語に訳され、相手に流れる。逆に相手がしゃべった言語は、母国語(ここでは日本語)に翻訳されて音声として聞くことができる。あたかも翻訳機を介して通話しているように会話が可能になるというわけだ。
音声通話時に「通話アシスタント」を起動すると、「ライブ翻訳」が利用できる
実際に、日本語(自分)と英語(相手)で通話をしてみたが、精度はまずまず。ただし、翻訳の手前である音声認識にもミスがあり、やり取りが正確に伝わらないこともあった。一方で、何をしてるかということや、簡単な予定であれば、母国語をしゃべっているだけで相手に必要な情報が伝わる。普段しゃべっているよりも、ゆっくり、かつはっきりと発話する必要はあるが、相手の言語がまったくわからない場合には使える機能だと感じた。
お互いの話した言語が、相手の話す言語に翻訳される。精度には課題があるものの、概要はつかめた
ただし、誤認識や誤翻訳があったのは、筆者がある程度理解できる英語だからという前提はある。これがもし、まったくわからないスペイン語や中国語だったら、そもそも間違いに気づけなかった。双方向でその可能性はあるため、ミスコミュニケーションが起きやすいと言えるだろう。今のままの精度では、信用しきってしまうリスクは高いため、ある程度補助的に使うことを想定した方がいい。
なお、翻訳機能はキーボードにも実装されている。オンにすると、日本語で入力し、確定した段階で即座にそれが英語に切り替わる。翻訳アプリを開いて入力したあと、結果をコピペするといった二度手間がかからず、直感的に外国語を入力できる。海外の人にメールを送るような時には、実に便利な機能。AIをさまざまな基本機能に組み込むことによって、スマホを使う時のストレスを取り除いている。
翻訳機能はキーボードにも実装されており、打った文章が外国語で入力される。アプリを起動する必要がなく、便利だ
こうしたAIを、コンパクトなボディに凝縮したのがGalaxy S24だ。前モデルまでとはデザインも大きく変え、フレームには丸みがなくなった。角丸のディスプレイとの組み合わせが、どことなくiPhoneをほうふつとさせるところはあるが、デザイン的にはよりスタイリッシュになった印象。ガラスの端がやや丸みを帯びており、フレームにつながっている工作精度の高さも評価できる。
フレーム部分の丸みがなくなり、よりスタイリッシュな印象に。背面ガラスサラッとした手触りで、フレームと高い精度で一体になっている
パフォーマンスも高く、操作感は良好。カメラのスペックは大きく変わっていないが、AIの進化によって暗所性能は向上している。グローバル版は、FeliCaを搭載していないなど、日本でそのまま展開することはできないが、発売が待ち遠しい端末の1つと言っていいだろう。Galaxy AIは一部の過去モデルもアップデートで対応するが、チップセットのパフォーマンスを必要とするため、比較的新しめのハイエンドモデルに限定される。昨年Galaxyを買ったばかりというのでなければ、ぜひ手に取ってその実力を確かめてみてほしい。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
持ちやすさ ★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★
音楽性能 ★★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証 ★★★★
決済機能 未評価(グローバル版のため)
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。