キャッシュレス決済の普及は、同時に現金を取り扱うサービスを終了に追い込む現象でもある。
たとえば筆者は、最近とある仕事でアメリカのロサンゼルスに渡航した。短い旅行ではあったものの、その間に現金を引き出したり、日本円を米ドルに両替したりということはただの一度もなかった。クレジットカードがあれば生活できるのだ。
それは日本の大都市部でもほぼ同様である。来日した外国人旅行者は、わざわざ日本円の現金を手に入れることはしなくなっている。となると、空港の両替所というものもだんだんと減ってしまうのだ。
空港から外貨両替ショップがなくなる!?
みずほ銀行が1月11日に発表したプレスリリースがある。
これによると、羽田空港にある5店、そして成田空港にある3店の外貨両替ショップを今年3月までに閉店するというのだ。さらに東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪にある外貨自動両替機18ヶ所についても取り扱いを終了する。
この決断の背景には、キャッシュレス決済の普及・浸透がある。利用頻度が少なくなっている現金両替に人員を割り当てることが難しくなったのだ。
しかし、両替所がなくなったからといって外国人旅行客が頭を抱えるということはもうないだろう。
これが10年前ならば、状況は異なっていた。「日本は外貨を両替できる店が少ない」という声はよくあり、インバウンド対策のために「外貨両替所を増やす」ことは必須だった。
が、今はパンデミックを経た2020年代である。キャッシュレス決済の急速普及により現金の重要性が下がり、インバウンド対策は「クレカを利用できる店・公共交通機関を増やす」ことに重点を置くようになった。
特に注目すべきは、公共交通機関である。
公共交通機関の「クレカタッチ決済対応」の影響
空港から東京23区内、もしくは周辺地域へのバスは到着ロビーにあるチケット発券カウンターで購入できる。しかし、その逆はどうか。広い町の中のどこかにある発券カウンターを探す、というのは外国人旅行者にはいささか難しいのではないか。
従って、彼らは直接バスに乗る。その際の決済方法として、クレカタッチが導入される例がここ最近相次いでいる。
3月1日、神奈川中央交通グループの羽田・成田空港向け高速バスで三井住友カード提供の公共交通機関向けソリューション「Stera Transit」を活用した対応が開始される。これにより、タッチ決済対応のクレカやスマホで決済できるのだ。
Stera Transitといえば、横浜市営地下鉄で今年中に自動改札機のクレカタッチ決済対応の実証実験が開始される話題もある。横浜市営地下鉄全40駅の自動改札機に専用リーダーが設置される見込みだ。
バス・鉄道共にクレカタッチ決済で乗車できる環境が整いつつある。即ち、外国人旅行者とっては到着空港から目指す地域へクレカ決済で移動できる手段さえあれば、あとは現金を用意する機会はあまり発生しないということだ。