将棋の「盤面あり評価値放送」は原則として自由であると示した判決が、2024年1月16日に大阪地裁で言い渡されました。
同判決は、将棋の棋戦主催者(新聞社など)の権利を制約し得る内容であるため、将棋界に対して大きな影響を及ぼすのではないかと注目されています。
1. 「盤面あり評価値放送」の問題点
大阪地裁判決で問題となったのは、いわゆる「盤面あり評価値放送」と呼ばれるものです。
「盤面あり評価値放送」は、おおむね以下のような形で行われています。
(1)リアルタイムで進行中の将棋棋戦につき、対局者が実際に行った着手を配信者が盤面上に再現する
(2)(1)の着手再現とともに、現局面におけるAIの評価値が表示される
(3)進行中の盤面および評価値を放送しながら、配信者と視聴者がコミュニケーションをとる
「盤面あり評価値放送」について指摘されていた主な問題は、棋戦主催者が有する棋譜利用の権利を侵害するのではないかという点です。
将棋の棋戦主催者のほとんどは、対象棋戦の棋譜利用に関してガイドラインを設け、利用する際には料金の支払いを課すなどの対応をとっています。
しかし、「盤面あり評価値放送」を行う配信者の多くは、棋戦スポンサーに対して規定の料金を支払わず、無断で棋譜を利用している状況です。
法的には、将棋の棋譜そのものには著作物性(著作権)が認められないと解するのが通説と思われます。
その一方で、棋戦主催者が独自に定めたガイドライン等によって、一般人による棋譜利用が制限されるのかどうかについては、必ずしも確立された見解が存在しません。
大阪地裁判決でも、まさに上記の点が動画配信者と棋戦主催者の間で争われました。