世界に誇る日本文化の一つ日本酒。近年海外でも注目が高まっているが、昨年はどれほどの日本酒が輸出されていったのだろうか?
全国約1,700の酒蔵(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)が所属する日本酒造組合中央会(以下:中央会)はこのほど、2023年度(1月~12月)の日本酒輸出総額が410.8億円(昨対比:87%)、数量2.9万㎘(昨対比:81%)となったことを発表した(2023年財務省通関統計)。
昨年まで、13年連続で輸出金額は過去最高額を更新し続けたが、今期のマイナスは、輸出金額・数量の約半数を占める中国とアメリカの影響が大きく響いた結果となった。
数量に比して金額の減少は小さく、引き続き付加価値の高い日本酒が輸出されている。中国では、景気減速や日本産水産物輸入の一次停止等の措置に伴う高級日本食レストランの不振の影響、アメリカでは、2022年入荷在庫の調整、人員不足やインフレによる消費マインドの減衰の影響が考えられる。
輸出金額1位は中国、輸出数量1位はアメリカ。韓国、台湾がプラス。輸出相手国は過去最高の75ヵ国に。
国別の輸出金額第1位は中国で約124.7億円(昨対比:88.0%)となった。中国における日本酒は、高級酒として富裕層を中心に人気を集め、好みの日本酒をレストランに持ち込み楽しむスタイルが見られていたが、景気後退や日本産水産物輸入停止により現地の高級日本食レストランでの需要が減少したことからマイナスとなった。
香港も約60.2億円(昨対比84.7%)と減少している。一方、輸出金額が伸びたのは、韓国29.0億円(昨対比:115.1%)、台湾26.8億円(昨対比:120.5%)のほか、イタリア、ブラジル、スペインが昨年の実績より上回った。
また、輸出数量第1位のアメリカでは、在庫調整やインフレなどが影響し6,502㎘ (昨対比:71.6%)という結果になった。輸出数量が伸びたのは、韓国4,192㎘(昨対比:103.4%)、台湾3,104㎘(昨対比:100.9%)で、両国とも輸出金額同様に堅調に推移した。なお、輸出先国数は、75ヵ国に及ぶなど、着実に増加し続けている。
今後は、伸びているインバウンド需要からの取り込みと海外での日本食の枠を超えた現地レストランへのアプローチにも注力
海外における日本酒の認知度はまだ低い国や地域も多く、販路も日本食レストランに偏在していることから、さらなる市場の拡大が可能と考えている。
また、2023年の訪日外国人旅客数は、円安も追い風となり約2,500万人とコロナ前の8割程度まで回復し、インバウンド消費は過去最高の5兆円に達したことが発表された(日本政府観光局)。
1Lあたりの輸出金額は継続して上昇傾向。「プレミアム」な日本酒トレンドが続く
今期、輸出金額・数量共に前年を下回ったが、1Lあたりの日本酒の輸出金額は2022年に引き続き2023年も上昇し過去最高になった。
特に中国、香港、シンガポールでは、2,000円/Lを超える金額となっている。10年前(2013年)の平均輸出金額は650円/Lだったが、2023年には 1,407円/Lと2倍以上に上昇している。比較的高価な日本酒が世界の市場を牽引している。
中長期的な今後の日本酒輸出展望
米国においても日本酒の認知度はニューヨーク州やカリフォルニア州では高いものの、テキサス州やフロリダ州では低く、地域的にはまだまだ成長すると考えている。
一方、中国、米国、香港で輸出金額の約7割を占めているで、輸出先国・地域の多角化を図って行くことが大切だ。東南アジアに加え日本食レストランが急増している中南米のブラジルやメキシコにも注目している。
中長期的には、アジア・オセアニアでは日本や中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN加盟10ヵ国による地域的な包括的経済連携協定(RCEP)による関税の段階的撤廃が追い風になると期待している。
また、カナダや台湾との間で有機表示の同等性承認が行われ、JAS認証有機日本酒が輸出可能となった。相手国との相互承認が進むことで海外のオーガニック市場に日本酒が広がっていくと考えている。
出典元:日本酒造組合中央会
構成/こじへい