2024年2月6日。今季一番の雪が降った日に、筆者は長野県の北部にある飯山市を訪れていました。
目的は雪中ツーリング。本来は二輪で雪道を走るなんてあり得ないのですが、雪道走行のエキスパートの力を借りつつ挑戦が叶いました。
雪に負けないための準備から、雪中ツーリングの当日の様子まで。まるっとお伝えしちゃいます!
雪道をバイクで走るには?
雪中走行の装備をご紹介する前に、今回のツーリングの参加者をご紹介します。
装備や走行のご指導をいただいたのは、バイク雑誌「モトツーリング」の神田編集長(写真左)。バイクで冬の北海道を走って最北の地を目指す「年越し宗谷」へと、毎年挑み続けている雪中ツーリングのエキスパートです。
一緒に走ったのは、バイクYouTuberの第一人者であるホワイトベース・二宮祥平さん(写真右)と、
ライディングスクールSRTTの代表・内藤栄俊さん。
神田編集長によると、雪道走行の最重要アイテムはタイヤなのだそう。具体的には「スパイクピン」という金属製のパーツを大量に装着した「スパイクタイヤ」がマストです。
タイヤが2本しかないバイクにおいては、スタッドレスタイヤだけでは4輪車のように雪道を安全に走ることができません。
スパイクタイヤには市販品もありますが、神田編集長によると「市販タイヤはピンが少なく滑りやすいため、ブロックタイヤやスノータイヤをベースに自作するのがオススメです」
今回はスノータイヤがベースのスパイクタイヤを履かせたスーパーカブ90と、ブロックタイヤがベースのハンターカブCT125の2車両を用意していただきました。
なおスパイクタイヤは、粉じんを発生させる関係から4輪での使用が法律で禁止されています。
対して125cc以下の二輪の場合は、冬季に限りスパイクタイヤの使用が認められています。(地域の条例で別途定められている場合もあるためお気を付けください)
積雪エリア外を走行する必要がある場合は、アスファルトへのダメージとスパイクピンの減りを考慮して、積載車で運搬するようにしています。
積載に使う軽トラックはスタッドレスタイヤを着用した4WD車両。正直な感想を言うと、雪道ツーリングへのハードルはかなり高い印象を受けました…!
雪道を走ってみた
準備が整った筆者らは、神田編集長の案内のもと雪が積もる山道へと入っていきました。
除雪済みの道であっても、道の両脇には1m以上の雪が積もってヒンヤリとした風が吹き下ろしてきます。走り始めからところどころに雪が残されていることに、ピリリと緊張と恐怖が走ります。
神田編集長は「スパイクタイヤで一番走りやすいのは、路面がすべて氷で覆われたアイスバーン。その点今日のコンディションはあまりよくないね」
「滑った瞬間は怖いかもしれないけど、ちゃんとスパイクがグリップするから大丈夫。焦ってアクセルを戻さず、そのまま走り抜けてみて欲しい」
そ、そうは言っても、普段のツーリングで足元がズルズル滑る機会はなかなかないし、エンデューロレース(未舗装の自然道を走るレース)の経験者以外は厳しいのです!
弱音と悲鳴をあげながら、まずはスノータイヤベースのスパイクタイヤを履いたスーパーカブで雪道へと突撃です。
足元がズルズルと滑る感覚に恐怖心が拭いきれず、足も使ってジタバタと歩くように進むのを止められません。
リアブレーキを踏むと「ジャジャジャッ」と地面を搔きながらも停車できるため、間違いなくグリップはしているのですが…それでも怖いものは怖い。自分の気持ちに嘘はつけないのです!
続いてはブロックタイヤベースのスパイクタイヤを履いたハンターカブでトライ。
シャーベット状に溶けた雪との相性はブロックタイヤの方がよいのですが、今度は車両の足つきの悪さへの恐怖が出ます。
ライディングスクールのコーチである内藤さんが筆者の走りを見て「バランス感覚は悪くないんだけど、足つきへの恐怖心が勝ってるね。こういった道では実は、スピードを出した方が車体は安定するんだよ」
交代しながら全員がトライ。「コレは難しいね」と言いながらも、ベテランライダーのお二人はさすがの走りでした。
内藤さんは、初めはズルズルと滑りながらゆっくりと往復をしていたのですが、とあるポイントで急に安定した走りに。
どうやら途中でコツを発見されたようで、人が「わからない→わかる」へ移行する貴重な瞬間を目撃させていただいたのでした。