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外国人就労者の預金口座開設を後押しするアプリ「GIG-A」とそれを象徴するBaaS時代の幕開け

2024.02.08

日本は金融機関が充実している数少ない国である。それは都市銀行の他にもゆうちょ銀行、地方銀行、信用金庫が全国津々浦々に店舗を構えているからだ。

従って、全国指名手配でもされていない限り「預金口座を持っていない」ということは殆どない。ただしこれは、日本に市民権を持つ日本人に限った話である。外国人の場合はそうはいかない。

外国人が日本で預金口座を開設することは、実は非常に困難だ。言葉の問題、営業時間の問題、クレジットカードの問題。それらを解決するため、去年3月にサービスを開始したのが『GIG-A(ギガー)』という金融サービスである。

このGIG-Aは、日本で就労する外国人に向けたモバイルアプリを配信している。

外国人の預金口座開設までの「障壁」

日本の地銀や信金は、メガバンクと同等かそれ以上の影響力を持っている。

我が国では「ウチは先祖代々○○銀行の顧客」という人も珍しくなく、地銀・信金を中心としたネットワークも整っている。地方都市ではメガバンクの口座の他、「職場に作るよう言われたから」という理由で地銀・信金の口座を持っている人も存在する。いずれにせよ、日本は「預金口座に困ることはない国」なのだ。

ただし、外国人となると話は別である。

まず、契約書類は日本語のみということが殆ど。世界でも最も複雑な文語を有する日本語の読み取りができないと、口座開設そのものを断られることもある。また、日本の銀行の営業時間は平日15時までということが多い。働いている時間帯に銀行が閉まってしまうのだから、そもそも口座開設手続きをするための暇がない。

GIG-Aは、そんな外国人就労者の悩みの解決を目指している。

このサービスは東京きらぼしフィナンシャルグループ傘下の株式会社UI銀行とのAPI連携により、スマホアプリで預金口座を開設できる仕組み。現時点の対応言語は日本語、英語、ベトナム語で、これは順次拡大する予定という。つまり、日本語の読み書きができなくとも預金口座を開設できるのだ。

月額制の意義

GIG-Aには月額利用料というものが設定され、これは990円。ただし早期アクセスメンバーに登録すると、2024年末までは利用料が無料になる。

月額制を採用しているのは、その分だけ入金・出金・送金手数料を無料にしようという意図があるからだ。「同一銀行ATMの出金・入金」「他行ATMの出金・入金」「同一銀行あての国内送金」「他行あての国内送金」が、何とGIG-Aでは無料である。今の時代、他行ATMでの出金にかなりの額の手数料が発生するため、このあたりは利用者にとってはありがたいはずだ。

この記事はもちろん日本語表記だが、それ故にGIG-Aの利便性が伝わりづらいのではと筆者はやや不安に感じている。

ここで読者の皆様に、普段利用しているインターネットバンキングのアプリを開いていただきたい。言語設定ができない場合が殆どではないか。アプリが日本語にしか対応していないのだから、日本語のできない外国人就労者がこれを利用することはほぼ不可能である。

そうした問題をも解決しようというのがGIG-Aの掲げる方向性だ。

金融弱者を救う「BaaS」

このようなBaaS(Banking as a Service)は、移民の多い国では急成長している。

移民とは、言い換えれば「金融弱者」である。預金口座を作ることができず、それ故に社会的信用を得られず、就労できる場所も限られる。言い換えれば、預金口座さえ得られれば社会的信用も向上するという意味だ。

それは「クレジットカードの保有」にもつながるが、より広域的な視点で考えれば「キャッシュレス決済を利用できるようになる」という点を見据えることもできる。

アメリカの都市部で「完全キャッシュレス店舗の禁止」の議論が盛り上がっている背景には、預金口座を持っていない人の存在がある。「預金口座を持っていない人」とは、即ち「低所得者」だ。仮にロサンゼルス市内全ての小売店舗が完全キャッシュレス対応(現金決済非対応)になってしまえば、キャッシュレス決済を利用できない人はどこで買い物をすればいいのか。

キャッシュレス決済の整備は、店舗側だけで完結できる話ではない。消費者側の「金融インフラ」も整えなければ、どんなに合理的な計画も夢物語に終わるだろう。

BaaS分野の幕開け

「日本は移民を受け入れるべきか」という議論が存在する。

これについて筆者から意見できることはないが、どのみちBaaSの発展と定着は「時代の流れ」ではないか。

外国人就労者も気兼ねなく預金口座を作れる環境を整える。これは金融犯罪の抑止にもつながることで、日本人にとっても全く悪い話ではない。

もちろん、GIG-Aのようなサービスは今後も続々と登場するはずだ。2024年は日本にとっての「BaaS分野幕開けの年」となるかもしれない。

【参考】
GIG-A

取材・文/澤田真一

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