Xには「コミュニティノート」というものがある。
真偽不明のポストや明らかにデマと思われるポストに、協力者が解説や背景を後付けできる機能である。これによりXユーザーは、その情報が果たして真実かどうかを参考URL付きで確認することができるのだ。
実は筆者は、Xのコミュニティノートの協力者である。
その作業の中で、コミュニティノートの仕組みや「どのような投稿にコミュニティノートが追記されているのか」を観察することができたので、今回はその様子を読者の皆様にお届けしたい。
条件さえ満たせば誰でも協力者に
1月1日、石川県能登地方を襲った地震は様々なデマ投稿を拡散させるきっかけになった。
特に問題になったのが「生き埋め投稿」である。
「珠洲市の○○で家族が倒れた家の下敷きになりました。助けてください!」
こうした投稿は本当に家族が生き埋めになった人のものだったこともあったが、大半はインプレッション稼ぎが目的の虚偽情報である。
また、「被災地に外国人窃盗団が集結している」という投稿もあった。1世紀前の関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが被災者の間に広がったが、21世紀を20年以上も過ぎた今でも同様のデマを拡散させる者がいるのだ。
無論、そのような投稿に対する真贋の検証を行うのも、コミュニティノート協力者の役目である。コミュニティノートの作成に参加するには、以下の条件を満たす必要がある。
・Xのルールへの違反についての通知を最近受け取っていないこと
・Xに登録してから6ヶ月以上経過していること
・電話番号が認証済みであること
サブスクリプションの参加条件のように、登録者数や累計インプレッション数は加味されない。意外にも、コミュニティノート協力者になるためのハードルは決して高くないのだ。
「即効性」は皆無
上記の震災関連デマのような、誰の目から見ても明らかに嘘と分かる投稿は誰かがすぐさまノートを作成する。しかし、それが即座に公開されることはない。
まずは協力者同士でノートを評価し合う仕組みで、一定数の評価が集まって初めてノートが一般ユーザーにも公開される。この評価は「一人一票」だ。全く同等の権限を持った協力者が複数人集まってやっと公開される仕組みのため、しばしば協力者同士の議論も発生する。
ここまで読んで、感の良い読者はお気づきかもしれない。
投稿されたばかりのデマポストにすぐさまノートを貼る、というような即効性は一切ないのだ。
コミュニティノートが一般公開されるまでに要する時間は、どんなに早くとも1日はかかってしまうという見方で概ね間違いはないだろう。その1日、もしくは半日であったとしても、デマが拡散されるまでには十分過ぎる時間である。
このあたりは、筆者が能登半島地震をきっかけに感じた「コミュニティノートの弱点」だ。