意図しない体重減少、がんの可能性も
ダイエットをしているわけでも運動量を増やしているわけでもないのに体重が減った人は、医者に診てもらった方が良さそうだ。
新たな研究で、意図しない体重の減少は、その後1年の間にがんと診断されるリスクの上昇と有意に関連することが明らかにされたからだ。
米ハーバード大学医学大学院ダナ・ファーバーがん研究所のBrian Wolpin氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」2024年1月23/30日号に掲載された。
Wolpin氏は、「運動量の増加や食生活を健康的にすることで減量したのなら、健康にとって有益だ。しかし、このような健康的な行動に起因しない、意図しない体重減少が見られた場合には、プライマリケア医を受診するべきだ」と同研究所のニュースリリースで述べている。
この研究は、看護師健康調査(Nurses’ Health Study;NHS)に参加した40歳以上の女性と、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-Up Study;HPFS)に参加した40歳以上の男性から抽出した15万7,474人(年齢中央値62歳、女性71.1%)を対象にしたもの。
NHS参加者は1978年6月から2016年6月30日まで、HPFS参加者は1988年1月から2016年1月31日まで追跡されていた。
Wolpin氏らは対象者の健康と健康習慣に関するデータを解析し、過去2年間における体重減少と1年間のがん診断リスクとの関連を、体重減少のなかった場合との比較で検討した。
体重減少がどの程度意図的であったか(意図性)は、対象者が、身体活動量の増加と食生活の改善の両方を報告した場合には「高度」、どちらか一方を報告した場合には「中程度」、いずれも該当しないと報告した場合には「低度」とした。
164万人年に及ぶ追跡期間中に1万5,809人ががんを発症していた(罹患率は10万人年当たり964人)。
体重を報告してから12カ月間におけるがんの罹患率は、2年間で体重が10%以上減少した人で1,362人であったのに対し、体重に変化のなかった人では869人であり(いずれも10万人年当たり)、両群間に有意な差が認められた(群間差493人/10万人年、95%信頼区間391〜594人/10万人年、P<0.001)。
また、体重減少の意図性が「低度」に分類された人のうち、体重が10%以上減少した人でのがんの罹患率は2,687人であったのに対し、体重に変化のなかった人では1,220人(いずれも10万人年当たり)であった(群間差1,467人/10万人年、95%信頼区間799〜2,135人/10万人年、P<0.001)。
2年間で10%以上体重が減少した人では、特に、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がんなどの上部消化管のがんが多く認められ、そのほか、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病などの血液がん、大腸がん、肺がんも多かった。乳がん、泌尿生殖器がん、脳腫瘍、メラノーマなどの他のがん種との関連は認められなかった。
本論文の筆頭著者である、ダナ・ファーバーがん研究所のQiao-Li Wang氏は、「われわれは、健康的な体重減少と不健康な体重減少を区別したかった。健康的な体重減少は、食生活の変化や運動の増加によってもたらされるが、意図しない不健康な体重減少は、がんが根本原因である可能性が考えられるからだ」と話す。
また本研究では、早期がんの診断を受けた人と末期がんの診断を受けた人の間で、同程度の体重減少が認められたという。
研究グループは、「このことは、早期がんは体重減少を特徴としないという通常の考え方に反するものであり、また、原因不明の体重減少が、治療可能な段階の早期がん発見の手がかりになる可能性があることを示唆している」との見方を示している。(HealthDay News 2024年1月25日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2814132
構成/DIME編集部