■連載/阿部純子のトレンド探検隊
Xの投稿から始まった「冷凍餃子フライパンチャレンジ」
「味の素冷凍食品」は、1997年に油なし調理化、2012年には油なし、水なし調理化を実現した冷凍餃子を発売。張りつきにくく、失敗がなく、だれが焼いてもパリッとした羽根つき餃子が焼ける商品を目指し、ユーザーの困り事や悩みを反映してアップデートしていく“永久改良”を続けている。
2月11日から発売開始する「ギョーザ」は、従来品よりも約26%フライパンへの張りつきが改善されたリニューアル品。従来品でも、普通に作ればフライパンに張りつかず簡単にできるのが特徴だったが、今回のリニューアルは、2023年5月にX(旧Twitter)に投稿されたあるポストがきっかけだった。
「実際の投稿は(下記の)左側の画像ですが、12個すべてのギョーザが張りついてしまったショッキングな画像になっています。
私たちは、おいしさと調理の関連性に非常にこだわって開発してきましたので、『冷凍餃子はちゃんときれいに焼ける』という自負がありました。それだけにこの投稿には『どういうことだろう?』『どのようなフライパンでどう調理をしたらこうなるのか?』と、衝撃を受けました。
原因調査のためにフライパンを送っていただくようにXを通じて呼びかけたところ、全国から3520個のフライパンが集まりました。私たちはみなさんがきれいに焼いていると思っていたのですが、まだまだきれいに焼いていない方がこんなにいることをまざまざと実感したのです」(味の素冷凍食品 マーケティング本部 国内統括事業部 製品戦略課 リテールグループ ギョーザ担当 駒木根理花氏)
冷凍餃子の調理に失敗したフライパンを集めて検証し、商品の改良につなげる取り組みを「冷凍餃子フライパンチャレンジ」と命名。集まったフライパンを見ると、同社の想定以上に様々な状態のフライパンが使用されていることがわかった。
現在、油なし・水なしで焼ける冷凍餃子は他社も含め多く発売されているが、冷凍餃子全般の調理の調査では、きれいな状態で餃子を焼いている人は約8%しかいないことが判明。フライパンに張りついて皮が剥がれてしまう、焦げてしまう、焼き色が出ていないなど何かしら失敗している人が約25%に上った。
こうした実態を踏まえて「どんな人でもきれいに焼ける」ことを前提に、商品の改良を開始。ユーザーから届いたフライパンで検証を重ね、餃子がフライパンに張りつくメカニズムを分析していった。
うまく焼けないフライパンで餃子を焼く検証をひたすら繰り返したが、毎回同じ結果になることがなく、何度も繰り返しながら本当に改善されたのかという、再現性の確認に非常に苦労したという。
こうして誕生したのが今回のリニューアルした「ギョーザ」。現行品では1個もはがれなかったフライパンで改訂品を調理したところ、26%のフライパンで12個すべてきれいにはがれるという結果が出た。
フライパンで餃子を焼くとき、加熱すると底面にタンパクとでんぷんがくっついてしまうため、フライパンに油を引くという作業が必要になる。味の素「ギョーザ」には羽根のもとにも油や小麦粉が入っているが、リニューアル品では羽根のもとの配合を改良。餃子の下の方に油が来るように工夫して、薄い油の膜を餃子とフライパンの間に作る形にしたことで、タンパクやでんぷんが直接底面に触れにくくなり、剥離性を改善した。
フッ素樹脂が剥がれて傷だらけ、形もゆがんだフライパンでもきちんと焼けるか挑戦!
「冷凍餃子フライパンチャレンジ」で実際にユーザーから送られてきたフライパンを使ってリニューアルした「ギョーザ」が焼けるかどうか体験した。相当年数が経っていたり、使い込んでいるフライパンなので、きれいな羽根つきにならない場合もあるという“警告”を受けてチャレンジ。
筆者が使ったのは、フッ素樹脂加工が剥がれ、傷もあり、裏面は焦げで真っ黒、しかもゆがんでいるため、ガスコンロにかけると斜めになってしまうというシロモノ。従来品を調理した際は(下記画像)底面に皮が張りつき、羽根どころか中身と皮が分離した状態に。
火をつけないで凍ったままの餃子をフライパンに並べて、ふたをして中火で約5分蒸し焼きにする。中火の目安は炎の先がフライパンの底に届く程度。
5分経ったらふたをとり、羽根全体に焼き色がつくまで焼く(目安は3分程度)。普通のフライパンなら均等に火が通るが、ゆがんでいるため片方だけに火が強く当たり、羽根を焼き上げる際にもフライパンの位置を動かしたり、火力の微調整をしながら片方だけ焦げつかないように注意を払う。
このフライパンじゃヤバいかも……と察し、さらに羽根を焼いているときに餃子の先っぽをつまんで浮かし、底面と餃子の間に空気を入れて剥がれやすくする裏技も駆使!(※餃子の先は熱くないので指でつまめるが、フライパン面に手が触れないように注意)
劣化していないフライパンなら、フライ返しを使わなくても、焼いた後に皿をかぶってフライパンをひっくり返すだけで、きれいにのせられるが、今回は果たして……!?
片側に強く焼目が出ているのは気になるものの、フライパンからするりと剥がれて、羽根もきれいに形に仕上がっているので、こんなフライパン(失礼!)でも、新しい「ギョーザ」はきちんと焼き上げることが実証できた。