2025年の税制改正において扶養控除の見直しと合わせて、23歳未満の扶養家族がいれば生命保険料控除額の一般生命保険料枠が拡大される予定だ。生命保険料控除額を最大限活用するために、仕組について改めて解説する。
生命保険料控除とは?
生命保険料控除とは、所得から1年間に支払った生命保険料の一部金額を控除できる制度だ。会社員は、年末調整で生命保険料控除額証明書を添付し、保険料を記載またはシステムに入力することで控除を受けられる。
控除できる金額は、以下のように旧契約と新契約で分かれており、保険の種類により控除できる上限がある。
支払っている保険料の金額により分けられる計算式にあてはめて、控除額を算出する。
旧契約と新契約では計算式と上限額が異なる。
旧契約は、平成23(2011)年12月31日以前に契約した保険で、一般生命保険料が最大5万円、個人年金保険料は最大5万円、合計10万円を所得から控除できる。
一方、新契約は、平成24(2012)年1月1日以降に契約した保険で、一般生命保険料が最大4万円、介護医療保険料が最大4万円、個人年金保険料が最大4万円、合計12万円を所得から控除できる。
旧契約の一般生命保険料とは、死亡保険、学資保険、医療保険、介護保険料等を指し、個人年金保険料は個人年金のための保険料を指す(生命保険で加入するもので、確定拠出年金や厚生年金とは異なる。)。新契約では、旧契約で一般生命保険料とされていた医療保険料と介護保険料、所得補償保険料は介護医療保険料となる。保険契約のなかで、死亡保険に医療特約が付加されている場合は、死亡保険にかかる保険料の部分は一般生命保険料、医療特約にかかる保険料は介護医療保険料に区別される。10月頃に保険会社から送付される証明書に、旧契約、新契約、保険の種類が記載されているので、証明書を確認すると分かる。
なお、個人年金保険料では、以下の条件に該当しないと個人年金保険料に該当しない。
■個人年金保険料
(1)年金の受取人が保険料の支払いをしている者、またはその配偶者であること。
(2)保険料は10年以上の払込であること
(3)年金の受取開始が満60歳以上となっており、受取期間が10年以上または終身であること
実際の控除額は、保険料の金額を上の表の計算式に当てはめて、控除額を計算する。
例えば、新契約の一般生命保険料を毎間3万円支払っているとき、「新契約」の「一般生命保険料」、「2万円超4万円以下」の「支払保険料×1/2+1万円」に当てはめると、控除額は2.5万円となる。また、保険料が年間8万円超であれば、年間10万円、20万円の一般生命保険料を支払っていても控除を受けられるのは一律4万円となる。
旧契約と新契約両方あるときの計算方法
一番計算が難しいのが、旧契約と新契約が両方あるときだ。年末調整では、すべての保険料を記載しておけばうまく調整してくれるだろうが、自分が支払っている保険料が実際どのように控除額に反映されているか理解しておいた方がよいだろう。
旧契約と新契約両方ある場合の全生命保険料の最大控除額は12万円となる。
それぞれの区分の控除額の上限は次の通りだ。介護医療保険料は新契約にしかない区分であるため、新契約の控除額上限は4万円となる。
次に一般生命保険料と個人年金保険料は旧契約、新契約それぞれの区分の計算式で計算し、以下の大きい方が控除額となる。
(1)旧契約+新契約の控除額の合計(最大4万円)
(2)旧契約のみの控除額(最大5万円)
(1)か(2)の大きい方が控除額
例えば、旧契約の一般生命保険料を年間10万円、新契約の一般生命保険料を年間8万円支払っているときは以下の通りだ。
(1)(旧契約)支払保険料10万円→控除額5万円(新契約)支払保険料9万円→控除額4万円 (旧契約)+(新契約)=9万円>4万円 ∴4万円
(2)(旧契約)支払保険料10万円→控除額5万円
(1)<(2) ∴控除額5万円
このように計算すると、一般生命保険料の控除額5万円、介護医療保険料4万円、個人年金保険料5万円と合計14万円になってしまう可能性があるが、この場合最大控除額の12万円となる。
例えば、旧契約の一般生命保険料が年間3万円、新契約の一般生命保険料が年間3万円のときは以下の通りだ。
(1)旧契約の控除額3万円×1/2+1.25万円=2.75万円
新契約の控除額3万円×1/2+1万円=2.5万円
旧契約の控除額2.75万円+新契約の控除額2.5万円=5.25万円>4万円 ∴4万円
(2)旧契約の控除額2.75万円
(1)>(2) ∴控除額4万円
このように、今自分が支払っている保険料で、生命保険料控除額をどのぐらい受けているか分かることで、まだ受けていない生命保険料控除額が判明する。
最大控除額の12万円になった人はもうこれ以上保険に加入しても、新たな生命保険料控除額は生まれない。