実は身近に潜む古墳(1)―神様になった古墳たち―【古墳王子の早口コラム】
こんにちは! 小学生の頃から古墳の魅力に目覚め、訪ねた古墳は2500基以上の高校生、古墳王子です。
このコラムでは皆さんにディープでマニアックな古墳の魅力が伝わるよう、僕が感じた感動や発見をオタク特有の早口でお伝えしていきます。
今回のテーマは実は身近に潜み、変身を遂げた古墳について。
全国に16万基! 実はコンビニの店舗数より多い古墳たち
皆さんは古墳といえば教科書に載っている奈良県の箸墓古墳や世界遺産に登録された大阪府の百舌鳥・古市古墳群の大仙古墳など、宮内庁が管轄する大きくて有名な古墳を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
知ってはいるけど実際に見たことはなく縁遠い存在と感じている人もいるかもしれません。ですが古墳は見つかっているだけで全国におよそ16万基以上あり、日本全国のコンビニエンスストアの店舗総数約5.7万店の3倍近くにも上ります。
では古墳たちは僕たちの身近のいったいどこに隠れているのか、いろんな姿に変身を遂げた古墳たちを探しに行きましょう。
大仙古墳(大阪府堺市)
地元の氏神様!でもその正体は!?
日本に住む多くの人はお正月に初詣、受験シーズンには合格祈願など地元の氏神様に参拝される機会がきっとあるでしょう。
そのとき鳥居をくぐった先の社殿が少し小高い所に建っていたりしませんか?もしくは社殿の後ろにこんもりとした山のような高まりが……それ、古墳の可能性アリ!
僕は個人的に神社古墳と呼んでいるのですが、北海道と沖縄を除く全国各地で古墳を探していると神社にたどり着くことが多いのです。
しかし『死は穢れ』とされる神社神道において、なぜ神聖なる境内にお墓である古墳が存在しているのでしょうか?
その起源を探ると文字がなく記録が残っていない時代のこと、非常にセンシティブで卵が先かニワトリが先かの論争にも似た結論の出にくい話ではありますが、考古学では発掘調査による地層や出土遺物の分析研究の結果、古墳が先ではないかという考え方が一般的です。
そこから推測できることは、地域の有力者が埋葬された古墳が立地やモニュメント的な意味合いで神様を祀るにちょうどよい場所であり、その地域に住む人々が何となく畏敬の念を持って代々崇めてきた特別な場所であったために、信仰を集めやすかったという利点が挙げられるのではないでしょうか。
もちろん全ての神社が古墳というわけではなく、八百万の神様というとおり、自然の山や川などありとあらゆる物を神様と捉えるのが神道なので、巨石や巨木を神と崇めたり、何か由来がある場所を聖地として社殿や祠を構え神社としているところ、あるいは特定の人物を神として祀る神社も多いです。
しかし古墳マニアの僕としては、神社古墳を見つけるとそこに埋葬されているであろう人物はとても人格者でムラを良く治めていたからこそ、死してなお墓である古墳が大切に守られ神社に変身して後世にも伝わっているのではないか、悠久の時を超えた今も優しく地域を見守ってくれている気がして非常にほっこりするのであります。
稲荷塚古墳(埼玉県児玉郡上里町)