“ちょっとした困難”を共有することで愛が深まる
カップルの関係を築いていくにはまずは“交際”があり“デート”を重ねていくことになるが、デートの定番と言えば映画観賞や食事、ドライブなどの旅行になるだろうか。
また2人がどの程度の親密度であるのか、どのくらいの時間と費用を費やせるのかでも違ってくるだろう。
今回の研究からもわかるように脳科学的にデートは脳に大量のドーパミンが放出される楽しくて幸せな行為ということになるのだが、もしもそれがデートではない場合は、どれもけっこう面倒な行動かもしれない。
ドライブでは渋滞に巻き込まれるかもしれないし、夢中にさせてくる作品ならともかくあまり好みではない映画を観ながら1時間以上も座っているのは苦痛でもある。また人気のレストランはなかなか予約が取れなかったりもするだろう。
しかし面倒なそれらの行動は愛する人と共にあることで、楽しく幸せな時間へと一変する。
なぜならその時、脳内には大量のドーパミンが溢れ出ているからだ。そしてむしろそうした“ちょっとした困難”を共有することで、2人の関係性がさらに強化されてくるのである。つまり愛が深まるのだ。
美味しくてお得であることがわかっている飲食店であっても、その行列に並ぶには時間や気候、気分や体調などいくつものハードルがあり、ましてや単なる知人や関係者と一緒に並ぶことなどまずあり得そうにないが、それが愛するパートナーと一緒であった場合、一転して状況は愛を深め合う好機に変わるのだ。
休憩中の外食などでは基本的にすぐにできるメニューを選んでサッと食べてすぐに店を出たいものだが、それとは逆に恋愛中のカップルにとって共に味わう外食は早く終わってほしくはないものだ。
それはドーパミンが放出される時間をなるべく引き伸ばしたいからにほかならなかったことになる。
いうまでもなく日々の生活の中で時間は貴重であり無為無策のままに過ごしたくないものだが、浪費しているように見える時間がドーパミン的には実はかけがえのない時間であり得ることにもなる。
仲の良いカップルにとって行列に並ぶ行為そのものがエンターテインメントであるとすれば羨ましい限りだ。
※研究論文
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(23)01741-4
※参考記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2024/01/240112114712.htm
文/仲田しんじ