裁判所の判断
裁判所は、Y弁護士に対して合計1億2840万円の賠償を命じました。
裁判所は「Xさんはこれまで男性経験がなかったところ、30歳以上も年上の代表弁護士から、およそ男女が性交することなど想定されていない場所で処女を喪失させられており、これはXさんにとって苛烈で耐え難い出来事であり、精神的苦痛は計り知れない」「もはや後任を探す気力すらなく、自殺を選択するしかないほどに追い詰められていた」として、Y弁護士の性的行為と自殺の因果関係を肯定しました。
▼ 友人の裁判官も出廷
裁判には、Xさんの友人の現職裁判官(女性)も出廷して証言しました。友人の裁判官は法廷で以下のように証言しました。
「Xさんと居酒屋にいった時に『ボスが服の上から私の胸を触った』『そこから先に進んで服を脱がされ、ブラジャーを外されて直接、胸を触られた』「性交までしようとしてきて頭が真っ白になった』『生理中であることを理由に断ったが、私のショーツを脱がし、顔を生理の血で真っ赤にしながら私の性器を舐めてきた』『翌日には性交されてしまった』と言ってました」と。
裁判官は「現職の裁判官が殊更に虚偽の証言をすることは想定し難い」として、友人裁判官の証言を信用して、性行為があったことのひとつの証拠として採用しました。
▼ Y弁護士の反論
Y弁護士は色々と反論していますが、裁判所は一蹴しています。一部を挙げます。
Y弁護士
「勃起障害を患っていた」
裁判所
「性交渉することが不可能とは断じ難い」
Y弁護士
「Xさんは私に好意を抱いていた」
裁判所
「Y弁護士の話すエピソード程度でXさんがあなたに好意を抱いていたとは認定できない。たとえば、ひとつのエピソードとして、うどん屋でY弁護士が寿司を頼んだ際、Xさんが『あ、それ欲しかったのに」と甘えるように言ったというエピソードを挙げるが、その程度では恋愛感情を抱いていたとは認定できない」
Y弁護士
「自殺に基づく損害は特別損害である。予見可能性がなかった」
裁判所は「寝言は寝て言えよ」レベルでブチギレています。正確には、
裁判所
「このような主張は、性的被害を受けた者の心情を理解していないと言わざるを得ないし、そもそも、自ら不適切極まりない性的な加害行為をして自殺の原因を作り出しておきながら、自殺やこれに基づく損害の発生につき予見可能性がないなどとして因果関係を否定するがごときY弁護士の主張は、失当であるとの評価を免れない」
遺書を読むと涙が出てきます。
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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