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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
痛ましい事件です。新米の弁護士さん(以下「Xさん」)が、代表弁護士から性的行為を受け、自死に追い込まれた事件です。
Xさんのご両親が代表弁護士を訴え、裁判所は1億円を超える賠償を命じました(弁護士法人S法律事務所事件:大分地裁 R5.4.21)。
Xさんの友人の裁判官も出廷して、Xさんが受けた性行為を証言しています。
今回は、その判決文を読み解いていきます。
※ 判決文が70ページ以上もあるため一部抜粋して簡略化しています。
当事者
▼ 加害者(Y弁護士・男性)
・代表弁護士
・元弁護士会の会長
・元日弁連の理事
・64歳くらい
・妻あり
▼ 亡くなったXさん(女性)
・弁護士(4年目)
・享年32歳
・性格:真面目で努力家で責任感が強かった。おとなしい。頼まれたらうまく断ることのできない性格。事を荒だてるよりかは、自分が我慢することを選ぶタイプだった。
事件の概要
▼ 危険な弁護士事務所に入所
H26.12、弁護士になり、ある事務所で勤めることになりましたが、そこには鬼畜のようなY代表弁護士がいました。
Y弁護士は、事務所の上のフロアに自身のプライベートルームを設けていました。自分が休憩する時に使用していたようです。そこには、ベッドに変形するソファがあり、焼酎・ブランデーが置かれていました。
▼ Xさんを襲う
Xさんが入所して3ヶ月くらい経ったころ。Y弁護士は、そのプライベートルームで、嫌がるXさんと1回性交渉し、7~8回の性的行為をしました。それから、3年半ほどXさんはY弁護士の行動に悩まされ続けていたようです。
▼ 父の誕生日会でXさんが帰省
H30.8.24、Xさんが実家に帰ります。父の誕生日会で、父母と居酒屋に行きました。
▼ 最後の別れ……
8.26、Xさんは実家を出る時、スーパーの裏口で母に対して「お母さん、ぎゅっとして」と言いました。お母さんは「子どもみたいだね」と言い、Xさんを抱擁しました。Xさんは精神的に相当追い込まれた状況だったのでしょう。
▼ 自殺
その翌朝のことです。Xさんは自分のアパートで自殺します。Xさんが出勤してこなかったので、Y弁護士が警察官を伴いXさんの自宅に行くと、スーツを着た状態で首を吊り、壁にもたれかかっていました。
▼ 遺書
遺書が2通ありました。事務所宛と家族宛です。
■ 事務所宛の遺書の要約
・事務所にいる間、ずっときつかった。
・事務所の2階なんかで処女を失って、毎日のように部屋に来ては「俺のこと好きか?」と聞かれた。
・ずっとやめたかったけど代わりの1人を連れてこないと辞められないと言われた。
・そんな気力はもうないです。もうムリです。本当に申し訳ありません。
全文は以下のとおりです(判決文より引用)
■ 家族宛の遺書の要約
・お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お義兄さん、おじいちゃん、おばあちゃん、本当にごめんなさい。
・家族といる時が一番幸せだった。
・皆、私の自慢で、誇りで、大好きだよ。
・お父さん、誕生日の次の日にごめんなさい。司法試験に受かった時、泣いて喜んでくれたの、忘れられないよ。
全文は以下のとおりです(判決文より引用)
▼ 提訴
ご両親がY弁護士に対して損害賠償請求しました。