廃棄されていたカカオの皮をアップサイクル!8つのクラフトビールブルワリーが手がけた「チョコ風味ビール」プロジェクト
2024.01.31個性が光る!多種多様なカカオハスククラフトビール
8ブルワリーで作られた「CACAOMOIビール」は、味も香りもそれぞれ異なる、個性的でユニークなビールが揃った。
「私たちも今日初めて他のブルワリーさんのビールを飲み比べましたが、本当に多種多様。カカオハスクを使って作るというのは一緒ですが、みなさん本当に自由にレシピを作られたんだなというのがわかりました。クラフトビールの多様性とか自由さが、このプロジェクトを通じて楽しめたと思っています」(ふたこビール 市原尚子氏)
〇Chocolate Barley Wine(本庄銀座ブルワリー/埼玉県本庄市)
大麦を使ったハイアルコールの「バーレーワイン(麦のワイン)」にカカオハスクを加えチョコレート風味にアレンジ。ビールは苦いイメージが強いため、糖分を残して度数を上げることによって、チョコレートという名にふさわしく、甘みを感じふくよかに飲めるビールに仕上げている。ビールの温度が上がってくると、より香りと甘みが開いてくるのも特徴で、ゆっくりと時間をかけて楽しみたいビール。アルコール分10%。
〇CRAFTBEER by cacaomoi(大根島醸造所/島根県松江市)
飲みやすいビールをイメージして、ラガータイプにカカオハスクとレモンピールを加えて、軽やかな白ビール製法で作られている。最初に柑橘系の香りを感じ、口に含むとのカカオの香りが来る。最初の1杯目に飲みたいビール。アルコール分5%。
〇Holiday Cacao Stout(ふたこビール/東京都世田谷区)
カカオハスクの香りに、乳糖由来のやわらかな甘みをつけ、“冬のホリデーに飲みたくなるビール”をコンセプトで作られた。クリーミーな口当たりと、チョコレート麦芽のほろ苦さが調和し、豊かな風味とコクが楽しめるミルクスタウトタイプ。アルコール分5.8%。
〇Cacao Melody(GROUNDTAP BREWERY/愛媛県西条市)
カカオをしっかり感じるブラウンエールタイプ。アルコール分6%。「カカオを主役にしたくて結構大量に投入したんですが、今日聞いたらうちが1番ではなかったみたいで(笑)。とはいえ、カカオは香りや後味にしっかり出ています。カカオドリンクみたいな新感覚なビールで、普段ビールを飲まない方でも楽しめるような、新しいきっかけになればと思っています」(GROUNDTAP BREWERY 山根大樹氏)
〇柚子れないカカオモイ(ぬとりブルーイング/埼玉県川口市)
黒ビールにカカオハスク、柚子皮と果汁を加えた酸味のあるポータータイプ。アルコール分4.5%。「毎年この時期に、黒ビールで酸っぱいビールを作っています。今年はタイミングよく柚子が手に入り、柚子の果汁と皮、さらにカカオハスクでチョコの香りを加えることで、甘酸っぱいけど香ばしくて、30年くらい前の青春を思い出させるようなビールができました」(ぬとりブルーイング 山田泰一氏)
〇カタオモイかしら?(BREWMIN‘/富山県氷見市)
ロースト麦芽由来の香ばしさと、カカオハスク由来のチョコレートの味わいで、ビターチョコのような風味を目指したスタウトタイプ。アルコール分4.5%。
「チョコレートっぽい方向に倒す黒ビールは、私たちにとって初めての挑戦。一番多くカカオハスクを使ってやろう!というコンセプトで仕込みました。
ラベルにもこだわっていて、弊社の缶ビールのラベルには毎回キャラクターが登場しますが、今回はバレンタインシーズンの黒ビールなので少し女の子っぽい雰囲気のラベルを採用しました。普段、クラフトビールを飲まない方でも、ポップなラベルで手に取るきっかけになり、引いてはSDGsの意識が広がるきっかけになれたらいいなと思っています」(BREWMIN’山本悠貴氏)
〇CHILI PEPPER CHOCOLATE(Yellow Beer Works/福島県福島市)
福島市の農家が醸造するブルワリー。メキシコのトウガラシの入ったチョコレートドリンクからインスパイアされて醸造。カカオハスクの投入のタイミングにこだわり、アロマからフレーバーまでしっかりとカカオが感じられるスタウトタイプ。アルコール分6%。
〇CACAO-KARA(さかい河岸ブルワリー/茨城県猿島郡)
ジンジャーチョコレートから発想を得て、小麦の香りの豊かなブラウンエールをベースにカカオハスクをふんだんに使用、そこにスパイシーな濃厚な味をプラスするため粉末ショウガをブレンド。豊潤でまろやかな口当たりに、複雑な辛みとスパイシーさが加わった味わい深いビールに。アルコール分5%。
〇CACAOMOIタンブラー
カカオハスク、間伐材、リザイクルプラスチックのみで製造したサステナブルなリユースカップ。原料製造は愛知県、タンブラー成形は石川県と、日本の技術を活かし製造工程はすべて日本で行った。表面強度向上のため、石川県の伝統工芸「山中漆器」の塗師が一個一個コーティングし、高級感のある仕上がりに。強度も出るのでお手入れが楽にできる。
【AJの読み】異なるスタイルの8種のビールだがチョコレートとのペアリングはピタリとハマる!
ブルワーの自由な発想で作られるクラフトビールは、様々な副原料が使われる。チョコレートの主成分となるカカオニブ(カカオ豆の胚乳部)を使ったクラフトビールは以前よりあるが、廃棄されるカカオの皮を使ったクラフトビールの本格的な取り組みは、アサヒユウアスの活動が初となる。
「チョコレートを作る過程で皮の部分がローストされているので、カカオニブと比べてカカオハスクは豆っぽい生臭さが少ないと感じました。香りもニブと比べ持続しやすく、総じて作りやすいなと思っています」(本庄銀座ブルワリー 中田氏)
今回の8種のクラフトビールは、同じカカオハスクを使用しても、味も風味も全く異なる個性的なクラフトビールに仕上がっている。こうした違いは入れるカカオハスクの量や、どの工程で入れるかによって出てくるのだという。
「入れるタイミング、入れ方にも様々な特徴を生み出す工夫のポイントがあります。ビールの製造工程では、熱をかける工程と冷却する工程がありますが、温かいとき、冷たいときといったカカオハスクを入れるタイミングでチョコレートの香りが出やすくなったり、味に効かせたりと変化します。そうしたブルワーの方々の工夫によりビールの個性が出ているんです」(BREWMIN’山本氏)
クリーミー、酸っぱい、辛い、苦いとそれぞれに個性がありながらチョコレートの風味をしっかり感じる8種類のCACAOMOIビール。こんなにも味や風味に違いがありながら、チョコレートとペアリングすると、見事にピタリとハマり、飲みやすくなったり、チョコレートさがさらに際立ったりと味が変化する。CACAOMOIビールにはぜひチョコレートと合わせてみて!
文/阿部純子