アナウンサー生活初の選手からのリクエスト
そんな戸塚中継所では、一生忘れられない、アナウンサー生活で初めてのことが起きました。
なんと、次の走者としてウォーミングアップエリアで体を動かしていた青山学院大学の倉本玄太選手から「すみません、実はこのことを喋ってほしいのですが……」とリクエストがきたんです。
「実は8区を走る予定だった田中が、走れなくなって、選手皆に作ってくれたんです」と、大事そうに名前入りのお守りを見せてくれました。
怪我があり、走れなかった副キャプテンの田中悠登選手の分まで一緒に走りたい。
その想いが痛いほどに伝わってきました。
スポーツ実況に臨む時には常に、その選手を讃えるにはどんな表現が適切かを考えています。箱根駅伝で言えば、前回のコラムで書いたように、選手1人1人にアナウンサーが取材をさせてもらい、全員分の取材資料をビッシリと用意し、過去の大会や記録を整理して臨みます。
ただ、この時はそれまで用意していた資料を全て忘れて、倉本選手からの言葉をそのまま使い、放送させてもらいました。
選手から、まさかの実況リクエスト、アナウンサー生活で忘れられない経験になりました。
優勝翌日、ズムサタのインタビューに来て下さった青山学院大学・原晋監督、太田蒼生選手、倉本玄太選手。ズムサタの名物コーナー「プロ野球熱ケツ情報」の話になり、「阪神タイガースが好きです!」と教えてくれた広島出身の倉本選手。「カープはどうした!カープは!」と同じく広島出身の原監督にツッコまれていました。
改めて考える箱根駅伝の魅力、そして101回目の準備はもう始まっている
第100回箱根駅伝を終えて、改めて箱根駅伝の魅力を考える日々です。
ある大学の監督は、「公道」を使用させてもらっていることについて話していました。
お正月の道路を使用するのは、地元の方々の理解や警察の協力、箱根駅伝を成功させたいと思ってくれている方々の気持ちがなければ成立しない。それは突発的に起こせるものではなく、箱根駅伝に少しでも関わってくれた先人達皆で築いてくれたもの。
その感謝を常に選手には持ってほしい。そして、全力で、笑顔で楽しんでほしい。
その必死さや笑顔が、きっと次の大会に繋がっていくからと。
私も第100回箱根駅伝に携われたことに心より感謝し、次の大会に繋げるべく、第101回箱根駅伝への準備を始めようと思います。
文/梅澤廉 日本テレビアナウンサー