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「ご教示ください」と言われた時、もしくは目上の人に伝えるとき、正しい使い方なのか迷った経験もあるのではないでしょうか?「ご教授ください」とはどう違うのかも気になるところです。
本記事では「ご教示ください」の意味や使い方、言い換え表現などを解説します。
「ご教示ください」の意味や使い方は?
■意味
「ご教示(きょうじ)ください」とは、「教えてください」を丁寧に表現した言葉です。「教示」とは「教え示す」という意味で、誰かに教えを乞う時に使います。
似た言葉に「ご教授ください」がありますが、意味は異なるため、それぞれの使い方を把握しておく必要があります。
ここでは、「ご教示ください」の意味や「ご教授ください」との違いを見ていきましょう。
■「ご教授ください」との違い
「ご教示ください」は、相手から何かを教えてもらう際、敬意を表す表現です。「教示」とは「教え示す」ことで、主に簡単な知識や手順を教えてもらう時に使います。
これに対し、「ご教授ください」は専門的な知識をしっかり伝授するという意味合いがあります。「教授」とは、学問・芸事などを教え授けることです。
「ご教示ください」はその場限りの単発的な意味があるのに対し、「ご教授ください」は、一定期間にわたり、継続的に教えることを前提に使われる言葉と言えるでしょう。ビジネスシーンでは、時間をかけて習得するノウハウやスキル、専門知識などの教えを乞う時に使います。
■書き言葉として使う言葉
「ご教示ください」は書き言葉です。会話の中で使うと堅苦しい印象になるため、基本的に使いません。会話では「お教えいただけますか」「お聞かせください」といった表現が適切です。
ただし、プレゼンテーションや社内でのスピーチなど、公の場で話す時は「ご教示ください」を使うケースもあります。
なお、「ご教示」や「ご教授」と似た言葉に「享受(きょうじゅ)」があります。発音は似ていますが、「自分のものとして受け入れる」という意味で、「ご教示」や「ご教授」とは意味が異なります。間違えないよう注意してください。
「ご教示ください」の使い方と例文
「 ご教示ください」の「ください」は敬意を表す表現ですが、やや強制するようなニュアンスがあります。そのため、使う相手によっては失礼にあたる場合もあるでしょう。
同僚など対等な立場にある人に向けて使う場合には問題ありませんが、目上の人にはより丁寧な表現を使うのが適切です。
実際に「ご教示ください」をどのように使うのか、一般的な使い方とより丁寧な使い方に分けて解説します。
■一般的な使い方
特に上下関係にかかわらず文書で「ご教示ください」を用いる時、次のような使い方をします。
【例文】
・よろしければ、これからの予定についてご教示ください。
・参考までに、皆様のお考えをご教示ください。
・お手数ですが、書類の書き方についてご教示くださいますようお願いいたします。
・こちらの認識に誤りがありましたら、ぜひご教示ください。
■より丁寧な使い方
上司や取引先、目上の人に使う時は、「ご教示いただきますよう」のように「いただく」という謙譲語を使うことで、より丁寧な印象になります。また、「ご教示賜りますよう」という表現もおすすめです。
【例文】
・これからのスケジュールについて、わかる範囲でご教示いただけますと幸いです。
・弊社に改善すべき点がありましたら、ぜひともご教示賜りますようお願い申し上げます。
・配布する資料の作成方法についてご教示いただきたく、よろしくお願いいたします。
・会議で話し合った事項について、ご教示いただきたく存じます。
「ご教示ください」の言い換え
「ご教示ください」は書き言葉のため、会話で教えを乞いたい場合には、別の表現を使うとよいでしょう。「ご教示ください」の言い換えには、次のような表現があげられます。
・ご指導(しどう)ください
・ご指南(しなん)ください
「ご指導」も「ご指南」も教え導くという意味で、「ご教示」と類似する言葉です。ここでは、「ご教示ください」の言い換え表現を解説します。
■ご指導ください
「ご指導ください」の「ご指導」とは、ある目的や方向に向かって教え導くことです。上司や先輩社員など、上に立つ人に対して指導を仰ぎたい時に使います。
「ご指導ご鞭撻(べんたつ)」というフレーズで使われることも少なくありません。「ご鞭撻」の「鞭撻」はもともと「ムチで打つ」という意味があり、時代とともに「努力するよう励ますこと」という意味に変化しました。自分をへりくだり、「これからも厳しく教え導いてほしい」というニュアンスがある言葉です。
【例文】
・まだまだわからないことが多いため、ぜひご指導ください
・成果を上げられるよう尽力いたしますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
■ご指南ください
「ご指南ください」の「ご指南」とは、武術や芸事を教え示すことです。指南という言葉は、古代中国の「指南車(しなんしゃ)」という車が由来とされています。
指南車とは、車上に人形を備えつけられた二輪の車で、どの方向に動かしても人形の手が常に一定の方角を指す仕掛けが施されていました。道に迷わないよう方向を示すことから、指南は「教え導くこと」を意味するようになったとされています。
「ご指導」が幅広い範囲で「教え導くこと」を指すのに対し、「指南」は武術や芸事などの指導に限られた言葉です。ビジネスシーンでは、特定のスキルについて教えを仰ぐ際に使うとよいでしょう。
【例文】
・システムの操作方法について、ご指南ください。
・お茶の作法について、茶道の心得がある〇〇さんにご指南いただきたいと思います。
「ご教示ください」を正しく覚えよう
「ご教示ください」は「教えてください」を丁寧に伝える表現であり、書き言葉として使います。目上の人には「ご教示いただく」「ご教示を賜る」といった、より丁寧な表現を使うとよいでしょう。
会話で教えを乞う場合には、「ご指導ください」「ご指導ご鞭撻のほど」「ご指南ください」といった表現を使います。状況に合わせ、「ご教示ください」を正しく使いましょう。
構成/須田 望