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「仰る(おっしゃる)」と「仰られる(おっしゃられる)」のどちらが正しい敬語なのか、迷った経験はありませんか。
目上の人やビジネスで使う言葉は、相手に対して失礼がないように注意して選ぶ必要があります。「仰る」「仰られる」のようによく使う言葉こそ、意味や使い方を正しく理解しておくことが重要です。
言い換え表現も紹介するので、ぜひ失礼のない表現のバリエーションを増やしてください。
「仰る」とは?意味と使い方をご紹介
■意味と読み方
「仰る(おっしゃる)」とは、「言う」の尊敬語です。「仰有る」と漢字で表記することもあります。元々は「おおせある」という言葉でしたが、音が変化して「おっしゃる」と発音するようになりました。
■使い方
「仰る」は次のように使います。
【例文】
・先生が「忘れ物をした人は手を挙げなさい」と仰いました。
・早く仰ってください。
・確かにそう仰いましたよね?
「仰る」は、「そういう名前でいらっしゃる」という意味でも使われます。
・高橋さんとおっしゃる方が受付でお待ちですよ。
・お名前は何とおっしゃいますか?
参考:デジタル大辞泉
■書き言葉として正解なのは「仰る」?「おっしゃる」?
「仰る」と「おっしゃる」は、いずれも正しい表記のため、書き言葉としても間違いではありません。
しかし、「仰る」と漢字で記載すると、スムーズに読めない場合や、堅苦しい印象になってしまう場合が想定されます。柔らかい雰囲気の文章にしたいときは、「おっしゃる」と平仮名で表記するほうがよいでしょう。
また、ビジネスメールや報告書などは柔らかい雰囲気にする必要はありませんが、読み間違いを防ぐために、「おっしゃる」と平仮名表記するほうがよいかもしれません。漢字を多用するのではなく、読みやすさや印象にこだわって文書を作成しましょう。
■「仰られる」は正しい敬語?
「仰られる」は、「仰る」に尊敬の意味の助動詞「られる」を組み合わせた言葉です。「仰る」だけでも敬語のため、「られる」をつけると二重敬語になってしまいます。そのため、文法的には「仰られる」は間違っているといえるでしょう。
しかし、「仰られる」という言葉を使う人は多く、すでに習慣として定着している言葉といえます。そのため、「仰られる」を使っても間違いとは言い切れません。人によっては尊敬の意味を強めるために、「仰る」だけでも成り立ついうことを理解して、あえて二重敬語を使っている可能性もあります。
「仰る」の言い換えとして使える表現
「仰る」のように「言う」の尊敬語表現は多数あります。よく使われる表現としては、次のものが挙げられます。
・言われる
・話される
・お話しされる
・仰せになる
・お聞かせくださる
それぞれの使い方やニュアンスの違いについて見ていきましょう。
■言われる
「言われる」は、「言う」の尊敬語です。目上の人に対しても使えますが、「仰る」と比べるとややくだけた印象があるため、ビジネスシーンでもかしこまった状況では「仰る」を使うほうがよいでしょう。
【例文】
・先輩から言われたように、資料を15部用意しておきました。
・お客さまが言われたとおりに包装紙を交換しました。いかがでしょうか。
■話される
「話される」は、「話す」の尊敬語です。「言われる」と同じく目上の人に対しても使えますが、「仰る」と比べるとややカジュアルな印象があります。かしこまった場所では「仰る」を使い、尊敬の中にも親しさを表現できる場面で「話される」を使うほうがよいでしょう。
【例文】
・課長が話された内容は、今朝わたしが話したことそのままだ。
・教授が話されていたとおり、教員間の最近の言葉遣いは目に余るものがあります。
■お話しされる
「お話しされる」は「お」+「話し」+「される」と分解できます。「お」は名詞の頭につけて丁寧さを表現する接頭語で、「御(おん)」が変化したものです。また、「される」は「する」の尊敬語です。そのため、「お話しされる」は、丁寧かつ尊敬の意味を含めた表現といえます。
【例文】
・先生がお話しされているよ。静かに聞こう。
・昨日お話しされたことは本当ですか?あまりにも意外で、びっくりしました。
参考:デジタル大辞泉
■仰せになる
「仰せになる」の「仰せ」は、動詞「仰す(おおす)」の連用形で、目上の人からの言いつけや命令を示す尊敬語です。また、「仰せになる」の「になる」は中世以降使う用法で、動作を示す名詞の後ろについて非常に高い敬意を示します。そのため、「仰せになる」は、「目上の人が言いつけをなさる」「命令なさる」の意味になります。
【例文】
・会合の最後に会長が仰せになった。
・仰せになったとおりです。
類似する表現として「仰せられる(おおせられる)」があります。「仰せられる」は、「言う」の尊敬語です。
【例文】
・仰せられたことは理解したいと思います。
・お父様は何と仰せられましたか?
また、「仰せられる」は「命ずる」の尊敬語でもあります。「お命じになる」と同じニュアンスで使います。
・仰せられたことは守ります。気兼ねなくおっしゃってください。
・神は「光あれ」と仰せられた。
参考:デジタル大辞泉
■お聞かせくださる
補助動詞「お」を伴った動詞の連用形に「くださる」をつなげると、その動作の主が恩恵を与えるという意味になり、恩恵を受ける立場からは敬意を示せます。「お聞かせくださる」は、聞かせてくれる人、つまり話者が聴者に恩恵を与えるニュアンスがある表現です。
大切なことを打ち明けてもらった時や、役に立つ話をしてもらった時、時間を使って話をしてくれた時などに「お聞かせくださる」を使ってみてはいかがでしょうか。
【例文】
・お聞かせくださった言葉が、今でも耳に残っています。
・お忙しいところ恐縮ですが、ご意見をお聞かせください。
参考:デジタル大辞泉
状況に応じた表現を使おう
「仰る(おっしゃる)」は「言う」の敬語ですが、使うシーンによっては堅苦しい印象を与えてしまうかもしれません。
カジュアルな場面では「話される」や「言われる」などの敬語を使うなど、状況に応じた表現を心がけてみてはいかがでしょうか。
構成/林 泉