裁判所のジャッジ
裁判所
「Y刑務官はX男に慰謝料100万円はらえ」
―― Y刑務官、不服そうですね。
Y刑務官
「明らかにオカシイ!これは美人局(つつもたせ)です!A子は私と寝た〝後〟に『夫が府中刑務所に収監されている』と伝えてきたんです。不貞行為が発覚した原因もA子が自分の携帯電話に保存していた性行為の写真です。保存していることがおかしいと思います。X男とA子はそもそも夫婦といえるだけの実体がなく、しかも離婚後も肉体関係を持っています。おかしなことだらけなので美人局だと思います」
―― 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「その主張は認めません」
2行で瞬殺されました。
―― 裁判所さん、慰謝料を100万円にした理由は何でしょう?
裁判所
「妻と刑務官が約1年も不貞関係を続けており、これによって服役していたX男が大きな精神的苦痛を受けたことは想像に難くない。とすれば100万超えを認定しようと思いましたが!」
―― が!?
裁判所
「X男はA子と離婚したあとすぐ復縁してSEXするなど関係は修復されてきています。また、A子はX男と事実上の夫婦だった時期にも、他の男性とSEXしたことがあり、Y刑務官とSEXするに至った経緯や、SEX中の写真を撮ることなどに照らせば、A子は他の男性とSEXすることに抵抗の少ない女性であることが窺われます。そんなこんなを考慮して100万円と認定しました」
美人局と認定された事件もある
今回は美人局じゃないと判断されましたが、裁判所が「(美人局っぽい)ので慰謝料請求は認められない!権利濫用だ」と判断した事件もあるんです(最高裁H8.6.18)。事件をザックリ説明すると、妻がA子に「旦那と別れるかも」とグチを言ってたんです。その後、旦那がA子にアプローチしてA子と付き合うことになったんですが、妻がA子に慰謝料請求したという事件です。A子は飲食店を経営してたんですが、夫婦でA子の店にいって嫌がらせをしたりしたのもあって裁判所は「慰謝料請求は権利の濫用だ」と判断しました。
X男も賠償を命じられている
X男、完全勝利!と思いきや、X男にも10万円の賠償が命じられています。Y刑務官がX男に対して「プライバシーを侵害された」として損害賠償請求してたのです。
裁判所は「X男が刑務所に電話をかけまくっており、その態様が社会通念上の範囲を超えている」と認定しました。
浮気相手を追求する時は冷静に。会社にチクると一発でプライバシー侵害を認定されると思います。「アイツの人生、終わらしたらぁ!」という気持ちは分かりますが、ここは冷静に正規ルートで浮気相手に損害賠償請求するのが良いでしょう。
ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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