三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「先週の日経平均急騰を主導した投資主体が判明」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
先週は海外投資家が現物を9,557億円買い越しており、資本効率改善などへの期待は継続中
1月15日付レポートでは、先週の日経平均急騰を主導した投資主体について、1月19日に日本取引所グループが公表する「投資部門別売買状況」で確認できると説明した。
先日、その資料が公表されたので、以下、主な投資主体である、海外投資家、個人、投資信託、事業法人、信託銀行、自己(証券会社の自己勘定)を中心に、先週、1月第2週(9日~12日)の売買状況を確認していく(図表1)。
まず、海外投資家について、先週は現物を9,557億円買い越したが、この金額はデータを取得できる1993年9月第4週(20日~24日)以降、過去7番目に大きな週間買い越し額となった。
現物を取引する海外投資家には中長期的な視点で運用を行う年金などが含まれるとされ、日本企業の資本効率改善や賃上げ継続に対する海外投資家の強い期待は、年明け以降も継続している様子がうかがえる。
海外投資家は先物も買い越し、これが裁定取引を通じ自己の現物買い越し2,995億円に寄与
なお、海外投資家は先週、先物も4,937億円買い越したが、先物を取引する海外投資家には短期的な視点で売買を行う投機筋などが含まれるとされる。
先週は1月12日が株価指数オプションなどの特別清算指数(SQ)値の算出日であったため、株価上昇のなか、コールオプションの売り手が評価損補填のために先物を買う「デルタヘッジ」を行い、先物の買い越し額が膨らんだと推測される。
デルタヘッジに絡む先物買いで、先物の価格が一時的に割高になると、裁定業者(主に証券会社)が「裁定買い取引(先物売り+現物買い)」を行うこともある。
裁定業者の現物買いは、投資部門別売買状況の自己に計上され、先週の自己は2,995億円の買い越しだった。自己の現物取引額は、海外投資家の先物取引額と必ずしも一致しないが、海外投資家の先物取引額に大きく影響を受ける傾向がある。
個人と投資信託は売り越しに、先週の株高は昨年同様、海外投資家と事業法人、自己が主導
改めて、先週、現物を買い越した投資主体をまとめると、海外投資家が9,557億円、(海外投資家の先物買いが背景にあると推測される)自己が2,995億円、(自社株買いと推測される)事業法人が1,312億円となり、3主体合計で1兆3,864億円となる。
一方、今月から新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、個人と投資信託の動向も注目されたが、前者は1兆695億円の売り越し、後者も1,200億円の売り越しとなった。
個人はデータを取得できる1993年9月第4週以降、過去2番目に大きな週間売り越し額だった。先週は、個人、投資信託に、(国内公的年金などの動向を反映するとされる)信託銀行の105億円を加え、3主体合計で現物を1兆2,000億円売り越した。
新NISAからの新規投資資金も、市場に一定程度流入していると考えられるが、年初の株高は、昨年同様(図表2)、海外投資家と事業法人、自己の現物買いが主導したとみられる。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい