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実験段階にある膵臓がんの治療ワクチンが初期臨床試験で有望な結果、テキサス大学研究報告

2024.01.28

膵臓がんの治療ワクチン、初期段階の臨床試験で有望な結果

膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubham Pant氏らが実施した小規模な臨床試験で示された。

現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。ELI-002 2Pを製造するElicio Therapeutics社の資金提供を受けて実施されたこの試験の詳細は、「Nature Medicine」に2024年1月9日掲載された。

膵臓がんは自覚症状がないまま進行し早期発見が難しいことから、「サイレント・キラー」と呼ばれている。米国がん協会(ACS)によると、米国では推定で年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がそれによって死亡している。

膵臓がんに対するファーストライン治療は手術だが、再発の可能性もある。ELI-002 2Pは、再発を予防するためにデザインされたワクチンで、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識して破壊するように仕向ける。ELI-002 2Pは、患者ごとに製造することが可能だ。

今回の臨床試験は、KRAS遺伝子の変異がある膵臓がん患者20人と大腸がん患者5人の計25人(平均年齢61.0歳、女性60%)を対象に実施された。

患者は、全例が腫瘍を摘出する手術を受けており、このうち7人は手術に加えて放射線治療も受けていた。Pant氏は、「膵臓がんの手術を受け化学療法を終えた患者でも、再発リスクは残る」と同がんセンターのニュースリリースで述べている。

試験では、患者をコホート1〜5の5群に分け、ELI-002 2Pワクチン(0.1、0.5、2.5、5.0、10.0mg)を最大10回投与した。

その結果、ワクチンを投与された全患者の84%(21/25人)で期待されていたKRAS変異特異的T細胞反応が確認され、特に、投与量が5.0mgと10.0mgの群での割合は100%に達したことが明らかになった。

腫瘍および腫瘍に関連するDNAの存在の指標となるバイオマーカーの低下も84%の患者で認められ、6人(膵臓がん患者と大腸がん患者が3人ずつ)では、バイオマーカークリアランスが確認された。

患者全体での無再発生存期間は16.33カ月であったが、T細胞反応の変化量の中央値(ベースラインからの変化量が12.75倍)で二分して検討すると、中央値以上の患者では未達成であったのに対し、中央値未満の患者では4.01カ月であった。

副作用の発生率は、倦怠感が24%(6人)、注射部位反応が16%(4人)、筋肉痛が12%(3人)だったが、治療の中止や死亡に至るような重度の副作用は認められなかった。このことからPant氏は「ELI-002 2Pの安全性プロファイルは良好だった」と述べている。

Pant氏は「まだ初期段階の試験ではあるが、このワクチンによって多くの患者のがんの再発を防ぎ、生存期間を延長できる可能性があるという有望な結果が示された」と話す。

同氏は、「膵臓がんは再発すると治癒に導くことが不可能であり、まさにアンメットニーズの存在する領域であるため、これらの結果の全てが素晴らしい」と喜びを表す。

ELI-002 2Pの第2相臨床試験は2024年後半に開始される予定だ。同試験ではさらに多くのKRAS変異を標的とすることになるとPant氏らは話している。(HealthDay News 2024年1月9日)

Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02760-3

Press Release
https://www.mdanderson.org/newsroom/vaccine-demonstrates-potential-in-delaying-relapse-of-kras-mutat.h00-159694389.html

構成/DIME編集部

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