法務省の法制審議会では、マンションなどに適用される区分所有法の改正が議論されており、2024年の通常国会への法案提出が目指されています。区分所有法の改正法案において見込まれる注目ポイントの一つが、マンションなどの建替え決議の要件緩和です。マンションの老朽化が今後進展する中で、円滑な建替えを促す意図があります。
本記事では、マンションなどの建替え決議に関する区分所有法改正につき、現在の議論をまとめました。
※本記事は、2024年1月22日時点の情報を基に執筆しています。
1. マンションの老朽化が進行|建て替えるべきマンションが増える
近年では、築年数がかなり古くなり、劣化のため何らかの対処が必要となっているマンションが増えています。
国土交通省の資料によると、2021年末時点において、築40年以上のマンションは115.6万戸です。2041年末時点では、築40年以上のマンションは425.4万戸に増えることが見込まれています。
その一方で、2022年4月までに建て替えられたマンションは、累計でも約2万2200戸しかありません。まだ住み続けたい、高額の費用がかかるといった住民の思惑が障害となり、古いマンションの建替えが進んでいない状況です。
今回の区分所有法改正の議論は、マンションの老朽化に応じた建替えを円滑化することを目的の一つとしています。
2. 区分所有法に基づく「建替え決議」とは
マンションを建て替える場合、各区分所有者は、そのマンションの区分所有権を失うことになります。そのため、所有権に関する通常のルールに従えば、建替えには区分所有者全員の同意が必要となるはずです。
しかし、区分所有者のうち1人でも反対したら建替えができないとすれば、大型のマンションなどでは建替えが事実上不可能となってしまいます。
そこで区分所有法では、区分所有者の集会において「建替え決議」を行えば、一部の区分所有者が反対していても、マンション全体を建て替えることができる旨を定めています(同法62条)。