米国を代表する投資銀行である、J.P.モルガンチェース、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス。
そもそも金融セクターの特徴として、景気動向に最も影響を受けやすい景気循環株であるため、銘柄自体の財務の強さ以上に、経済状況に株価が左右される特徴があります。
つまり代表的な金融関連株をみることで、現在の米国経済の姿がある程度推測できるともいえるのです。
そこで今回の米国企業VSシリーズは「米国4大投資銀行」について解説したいと思います。
金融セクターの特徴
米国経済の指標のひとつとして活用できる金融セクターは、景気が低迷している場合、景気を刺激するために政策金利が引き下げられ、低金利やゼロ金利政策になり、金利が低くなれば銀行融資における収益が低下することになります。
また景気拡大期においては金融セクターの業績は上昇します。
そのほかにも貸倒引当金に注目です。これは貸倒れによる損失リスクに備えて、あらかじめ損失額を予想し、あらかじめ計上しておく資金を指します。つまり、金融機関の貸倒引当金が大きくなると、その国の経済状況が悪化していくことを表しているのです。
こうした理由から、金融セクター企業の四半期決算をチェックする投資家が多いです。
次に米国4大投資銀行の特徴についてみていきましょう。
JPモルガンチェース(JPM)
JPモルガン・チェースは、米ニューヨークに本社を構える金融持株会社です。
現在は主に投資銀行「JPモルガン」と商業銀行「JPモルガン・チェース」を主要な子会社として1200以上もの金融機関を統合し、そのなかで重要な位置を占めています。
またJPモルガン・チェースの企業名には、直接の関連性はありませんが、由来であるサロモン・チェースはかつての米財務大臣であり、その肖像が1万ドル札にも使用されています。
こうした歴史的な経緯により、JPモルガン・チェースは米国金融業界において重要な存在となっているのです。
モルガン・スタンレー(MS)
1935年、グラス・スティーガル法の発効に伴い、商業銀行業務と証券業務を同時に営むことが禁じられました。この法の影響を受け、モルガン商会の証券部門は分離・独立することとなりました。この分離独立により、1935年にモルガン・スタンレーが誕生しました。
1941年にニューヨーク証券取引所の会員権を獲得し、1986年には株式を一般に公開しました。この歴史的な経緯により、モルガン・スタンレーは証券業界において一層の発展を遂げ、その存在感を高めました。
ちなみにグラス・スティーガル法とは、銀行業務と証券業務の結びつきを解消し、金融システムの安定性を促進することが目的でした。しかし、この法律は1999年に「グラム-リーチ-ブライリー法」によって大幅に修正され、商業銀行と証券業務の統合が一定程度まで許可されるようになりました。この変更が金融業界の構造に影響を与え、一部の大手金融機関が商業銀行と証券業務を同一組織内で運営できるようになったのです。
バンク・オブ・アメリカ(BAC)
バンク・オブ・アメリカは、米国ノースカロライナ州に本社を構える大手金融機関です。その歴史は古く、1904年に米国の銀行家A.P.ジアニーニがサンフランシスコにバンク・オブ・イタリアという前身を設立しました。
1991年には、Security Pacificを買収し、これによってアメリカで初めて東西両海岸で銀行業務を展開することに成功しました。この戦略的な買収により、バンク・オブ・アメリカは全国的に広がりを持つ大手金融機関へと発展しました。
2008年には、金融危機が引き起こした経営状況の悪化した米国の第3位の投資銀行、メリル・リンチを買収しました。この大胆な統合により、バンク・オブ・アメリカは金融業界において一層の影響力を持つ重要な存在となっています。
ゴールドマンサックス(GS)
ゴールドマン・サックス・グループは、歴史ある米国の投資銀行です。
1869年にドイツ系ユダヤ人のマーカス・ゴールドマンによって設立され、その後、1882年に義理の息子であるサミュエル・サックスが参加し、この組み合わせがゴールドマン・サックスの基盤となり、強力な経済力を築いていくこととなりました。
1906年に同社はIPO(新規株式公開)業務の主要なプレイヤーとなり、その後、1956年にフォードモーターのIPOの主要な引受業務を成功裏に遂行しました。
これにより、ゴールドマン・サックスは金融市場での存在感を一層高めることに成功しました。
また2008年に発生したサブプライムショックでは、比較的損害が少なかったとされ、堅実な経営手腕を持つ投資銀行としても広く知られるようになりました。
ゴールドマン・サックスは、長い歴史と豊富な経験を背景に、投資銀行業界において重要な役割を果たしています。