失敗に対する受け止め方はいくつもある
失敗は成功の母と言いましたが、個人的にはそもそもあらゆる結果を短絡的に「失敗」「成功」と断定して処理することは正しくないと考えています。成功か失敗かの白黒思考は自分の価値観や思考を縛ってしまい、適切な判断を難しくさせることがありますので、結果に対して柔軟な受け止めができるようになる思考力を身につけるといいでしょう。失敗や成功の結果だけを取り上げるのは無意味なことだと思います。
例えば、今回のように「何か喜んでもらえると思ってやったことが、実は相手からすると嫌なことだった」ということがあったとしましょう。アナタからすると失敗と見えるでしょうが、そもそもの話として仮に成功していたとしても、その結果の中には必ずと言っていいほど改善点や修正点は存在していますし、失敗だと思っていることの中にも「やって良かったこと」などの収穫はあったはずです。
アナタ、今回はどうだったでしょうか? 狭くなっている視野を目の前ではなく、全体へと広げていきましょう。
(1)もともとアナタは何をしたかったのか(動機の整理)
(2)どのような効果を期待していたのか(期待効果予測)
(3)どのように実行したのか(実行)
(4)どのような結果が生まれたのか(結果の発生)
(5)期待効果予測とのズレの程度は(結果の点検)
難しければノートにまとめてみればいいです。
すると、単純な「失敗」という結果も深みのある経験へと変わります。
ある経験に対して「成功」「失敗」と止まってしまうのはもったいないです。先ほどの(1)〜(5)のプロセスを見ると、生じさせた結果も所詮は過去・現在・未来の「経験の連続」でしかないことがわかるはずです。そのため、ある時点における成功が後に重大な問題を引き起こしたり、ある時点における失敗が後で大躍進を生んだりする可能性があるのです。
今回の失敗も(1)〜(5)を整理して広い時間軸で考えると、すべては将来へのプロセスという意味以外持ちません。よって、叱責を人間性が否定されたと被害的に受け止める前に、相手の叱責の意図や自分の思いとのズレを検証することが成功への近道かもしれません。
ここで腐るのか。それとも次の成功への糧とするのか。受け止め次第で、その人の格が表われると言ってもいいでしょう。
失敗を新たな気づきとして前向きな糧へと変換しよう
アナタへ。大丈夫です。私もめちゃくちゃ失敗しましたし、何だったら今はうまくいっているVTuberになるという選択も10年後には「失敗した」となっているかもしれません。今の「失敗」「成功」が将来の「失敗」や「成功」にそのままつながるとも限りません。結局、それは些細なことなのです。今は悔しいかもしれませんが、仕事で成果を出して上司からの信頼を取り戻しつつ、楽しんで仕事をしていきましょう!
落ち込んだり「自分は悪くない」と思っていても始まらない。上司と自分の認識のズレを把握することこそが、人間的な成長につながると信じてがんばりたい。
犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。
©夢乃とわ SDイラスト/紀羅わたり
※「教えてかなえ先生」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME2・3月号に掲載されたものです。